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 印刷 2021年04月07日デイリー版4面

内航船員問題―解決への道筋】(4)アイテックマリン代表取締役・石川和弥、業界内のイメージ改善。船乗りは「楽・清潔・安全」へ

アイテックマリン代表取締役 石川 和弥氏
アイテックマリン代表取締役 石川 和弥氏

 業界や職業イメージは、発信されるポジティブ情報とネガティブ情報の総和で決まるが、生存本能を脅かすネガティブ情報の方が広まりやすい。現場で奮闘する人たちの努力とは裏腹に、昨今の海運業界イメージが、コロナや事故関連ニュースに引っ張られているのもその一例だ。

 本連載第1回では、海運業界の認知度アップをテーマとしたが、より人が集まる業界になるためには、情報発信量(媒体や頻度)と発信情報の質(ポジティブかネガティブか)の両方に配慮する必要がある。そこで今回は、発信される「情報の質」に注目して考察を進めていく。

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 発信情報の質を改善する本質的な解決法は、船乗りという職業を魅力的にすることだ。業界や仕事に対する誇りが向上すれば、良い情報は自然と広まってくれる。業界外ではなく、業界内の職業イメージに着目するのだ。

 これまで、現状把握として、船員・元船員300人に話を聞いてきた。結果、業務とやりがいの結びつきが強い人は、仕事を楽しんでいる人が多く、逆に仕事の意義づけが薄いと、労働環境や人間関係のキツさに目が向きやすくなる。印象が悪くなると、発信される情報もネガティブなものが増える。

 個人差が出やすい項目だが、現状を鑑みれば、個々人に丸投げして解決する類いの話ではないのだろう。業界全体で意識的に変えていく必要がある。 ◇

 どうすれば、現場の人に好印象を持ってもらえるか。シンプルに考えよう。人が避ける条件の逆を突いてやればいいのだ。

 人気のない仕事の象徴、3K(キツい・汚い・危険)という言葉が「壁打ち」(課題抽出)にちょうど良い。3Kの逆は、「楽・清潔・安全」。ぱっと見ただけで、人が集まりそうだ。

 まず、「楽」について。日本ではまだ長時間労働が評価されているが、欧米では楽に短時間で成果を上げることが評価される。余力が残る方が、新しい仕事に取り組めるし、安全に回せる注意力も上がる。効率化と改善を積み上げた結果でもあるので、一理ある。

 船内業務の統一や効率化、書類業務のデジタル化など、取っ掛かりとなる部分はとても多い。楽は悪ではなく、現場の士気を上げ、離職率を下げ、採用広報の武器となるのだ。

 次はいかに洗練された印象を持ってもらうかだが、航空業界や飲食業界の制服戦略が参考になる。仕事着がイケていると、本人も周りも好印象を持ちやすい。安全面や機能性の配慮は必要だが、普段使いする服装から職業イメージを変えていくのは効果的だ。

 3つ目は、いかに仕事や職場が安全という印象を高めてもらうかだ。海と陸の両方で協力できれば、打ち手は多い。脱我流による業務手法の標準化は可能性の一つだ。日頃感じる危険や改善点を気軽に報告・対策できる体制づくりや、負荷が高い・危ない管理領域のIT化もよいだろう。

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 船乗りは「楽・清潔・安全」。

 このような職業イメージにできれば、給与以外の理由で人が集まり、出ていかない土壌ができる。業界外への情報発信方法の改善は必須だが、現場と職業イメージの改善という内側の課題も見落としてはいけない。

 本連載は今回で終了となります。これまでお読みいただきありがとうございました。読者の皆さまの、内航船員問題の解決の一助となっていましたら幸いです。

 (おわり)

 いしかわ・かずや 九州大学大学院修了後、三井物産に入社。ケミカルタンカーを中心に、日本・ドイツで海運関連業務に携わった後退職。19年10月にアイテックマリンを創業。愛媛県出身、33歳。