内航海運×SDGs -人のサステナビリティー スーパーバナー
 印刷 2021年03月25日デイリー版1面

スエズ運河、メガコン座礁で封鎖。エバーG運航船。欧州航路、遅延悪化。タンカー市況急騰も

表・グラフ

 欧州と中東・アジアをつなぐ海上交通の要衝、エジプト・スエズ運河が事実上の封鎖状態となった。台湾船社エバーグリーンが運航する2万TEU型「Ever Given」が現地時間23日午前7時40分ごろ、スエズ運河の紅海側入り口に近い地点で座礁し、南航・北航ともに航行ができない状態だ。コンテナ船市場は既に昨年から船腹需給タイトによる運賃高騰が常態化。既に遅延が慢性化している欧州航路の状況が悪化するのは避けられない見通しだ。さらにバルカー、プロダクト船など欧州―アジア間で喜望峰ルートの迂回(うかい)航路を余儀なくされれば一気に用船市況が急騰する可能性もある。

 「Ever Given」は今治造船で連続建造されたシリーズ船の第7船で、2018年竣工。エバーグリーンが所属するオーシャンアライアンス(OA)のアジア―欧州航路に就航し、ロッテルダムに向けて航行中だった。

 関係者によると同船はエバーグリーングループが日本船主から用船し運航。

 スエズ運河庁によると、19年の船種別同運河通航量は、コンテナ船が5375隻で最多。タンカーが5163隻、バルカーが4200隻で続き、この3船種で全体の8割弱を占める。年間1万8000隻超の船舶が航行し、1日の平均航行隻数は約50隻。

 アジア―欧州・地中海航路では、ザ・アライアンスが8ループ、2Mが10ループ、オーシャンアライアンスが11ループを運航。この全てがスエズ運河を経由するため、今回の事故がコンテナ船サービスに与える影響は甚大だ。

 邦船3社の定航事業統合会社オーシャンネットワークエクスプレス(ONE)は「(事故の影響で)運航船に遅延が発生しているが、代替案を本格的に検討するには時期尚早」として、動向を注視する姿勢だ。

 スエズ運河を経由しない場合、南アフリカ・喜望峰経由のルートがあるが、スエズ経由と比較して5―7日程度航海時間が増加する。

 21万総トン、全長400メートルという大型船だけに、引き揚げ作業は難航すると見られるが、「スエズ運河は底が砂地状になっており、座礁というより『座洲(ざす)』。大型船ではあるが、離礁までそれほど時間を要さないのでは」(海運関係者)という見方もある。早期解決の可能性もあるため、運航船社は代替ルートへの切り替えを判断するまでには至っていない。

■プロダクト船、市況押し上げか

 自動車船はアジア―欧州間の基幹トレードがスエズ運河を経由しており、邦船社の運航船も通航機会が多い。自動車船関係者は「情報を収集しているが、仮に迂回するとなれば大変な作業になる」と話す。

 エネルギー輸送のLNG(液化天然ガス)船やプロダクト船、ケミカル船にとってもスエズ運河は中東―欧州航路の要衝だ。LNG船関係者は「万が一、中東から喜望峰回りで欧州に向かうとなると、トンマイル(輸送距離)が相当に伸び、(運賃急騰など)マーケットにかなりのインパクトを与える」と語り、需給引き締めの可能性を指摘する。

 VLCC(大型原油タンカー)市況に関しては、満載でスエズ運河を通航できないため、今回の事故の影響はほぼなさそうだ。

 プロダクト船市況については今回の事故を契機に、上昇する可能性が指摘されている。

 スポット用船市場で、LR(ラージレンジ)2型、LR1型はガス・オイルやヘビーナフサのトレーディング目的の輸送が活発で上昇傾向にあった。

 「西アフリカやシンガポールなどで荷揚げした船舶が中東に戻るのに時間を要し、中東では船舶の確保が難航している」(市場関係者)

 LR2、LR1ともにスエズ運河を経由し、中東から欧州に向かう配船は多い。今回の事故による滞船で供給が絞られ、需給が一層タイト化する可能性もある。