海事アカデミア2021 残席僅か
 印刷 2021年03月25日デイリー版4面

記者の視点/鈴木隆史】船員の中国沖滞船問題。解決へ海運業界が一致団結を

 ドライバルク市況が高値圏で推移している。

 小欄執筆時点の18万重量トン級ケープサイズバルカーの主要航路平均値は日建て1万9000ドル超、中小型バルカーはいずれも2万ドル以上を付けている。ケープサイズは1月に2万6000ドル台を付けた後、若干弱含んでいたが、ここへきて反発を強めている。

 一般的に不需要期とされる1―3月において、これほどまでに高騰するのは異例の展開だ。上昇の要因について邦船社の関係者からは、「実際の荷動きが堅調であること以上に、船舶の稼働が鈍く、供給が絞られ需給バランスがタイト化しやすい環境になっていることが大きい」との声が聞かれる。 ◇

 船舶の稼働が鈍いのは、第一に新型コロナウイルスの感染拡大防止で、各国による水際対策が強化されていることが挙げられる。感染拡大以降、海外の港を出港してから14日以上経過していない船舶に対して、入港を制限している国は依然多い。

 また、コロナ禍で通常の船員交代が難航し、船員国に直接船を寄港させて交代を図るオペレーションが浸透していることも、船舶の稼働に影響を及ぼしている。フィリピンなどの船員国に直接寄港し交代するには、通常のルートからデビエーション(離路)することになる。離路なくスムーズに航行する場合と比べれば、スケジュールに遅れが生じる。

 そして、目に見える形での船舶の稼働停滞が、中国と豪州との政治的な対立を背景とする、中国沖でのバルカーの滞船問題だ。

 この問題は昨年秋口以降本格化し、今なお解消されていない。中国側が豪州産石炭を積んだバルカーの荷役に制限をかけているとみられ、中国沖では複数のバルカーが滞船を余儀なくされている。

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 こうした船舶稼働減の事象によって、ドライバルク市場では需給が引き締まりやすい環境が形成され、近年まれにみる高騰につながっているようだ。

 ただ、好況の陰で中国沖の長期滞船で厳しい環境に身を置いている船員が多数いることは、あまりクローズアップされていない印象がある。

 ドライバルクのデータを提供するオーシャンボルト(ノルウェー)によると、中国沖で滞船している豪州産石炭積載のバルカーは24日時点で38隻。中には滞船期間が9カ月超に達しているケースもある。

 滞船が本格化した秋口以降、荷役を待つ船舶の中には、長期の滞船に耐えかねて揚げ地の変更を図る措置が取られるものもあったようだが、依然中国沖で荷役を待つ船も多い。

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 そうした中、最大旗国のパナマが事態の改善に向けてついに動いた。パナマ海事庁(AMP)は15日、IMO(国際海事機関)のキータック・リム事務局長に、長期間中国沖で滞船を余儀なくされているバルカーなどの船員と船主の救済のために、協力を要請したと発表した。

 AMPは「われわれの使命は乗組員らが無事帰国できるよう、合理的な解決策を模索することだ」「MLC2006(海上労働条約)に基づき、船員の本国送還の権利を否定してはならない」とし、IMOに協力を呼び掛けた。

 こうした働き掛けが奏功してか、ここへきて中国政府が豪州炭の荷揚げを許可したとの情報も出てきた。長期間、下船できずにいた船員らの下船も許可したという。一方で、「4月半ばまでは中国沖で荷役待ちとなる」(邦船社の関係者)との声もあり、解決には時間がかかる模様。

 ドライ市況の高騰は、海運業界にとって基本的にはプラスの話だが、その陰で船員たちが滞船により長期乗船を強いられているようでは、手放しには歓迎できない。

 今後の状況次第では、パナマだけでなく他の旗国やIMOなど、海運業界が一致団結して、解決に向け働き掛ける必要があるかもしれない。