海事アカデミア202104
 印刷 2021年03月16日デイリー版2面

航海用電子海図最大手のナブトール、PAYSで安全運航支援。eナビゲーション具現化推進。船社のニーズに対応・統合型プラットフォーム構築

 航海用電子海図(ENC)の頒布で世界最大手のノルウェーのナブトールは、「e―Navigation(eナビゲ―ション)」コンセプトの製品・サービスによる具現化で、船社の安全運航強化の取り組みを支援する。2012年には、通航した海域のENC(セル単位)だけを後から課金するPAYS(Pay As You Sail)方式の販売を、世界に先駆けて開始。ヒューマンエラーの発生源となる人為的なENCの選択作業を不要とした。

 足元では、システムが運航船のパフォーマンスをモニタリングし、リスク発生前に陸上の運航支援部門にアラートを送る「ナブ・フリート」を開始するなど、サービス拡充を進める。

 eナビゲーションは、陸上で普及している情報通信技術(ICT)の海上への展開を目指し、IMO(国際海事機関)で08年に戦略が策定された。ICTを活用し、船上と陸上での航海情報の収集、統合、交換、表示、分析により、航行の安全性向上や陸上からの航行支援の効率化などを図るのが目的。ナブトールは企業理念に、eナビゲーションの可能性を最大限に実現することを盛り込んでいる。

 SOLAS条約(海上人命安全条約)で船舶に装備する必要がある海図に関しては、外航船で順次搭載が義務化されたECDIS(電子海図情報表示装置)の普及とともに電子化が加速している。

 運航前の船舶では、船員や海務監督が、予定される航海に必要なENCを選択、購入する。従来の方法では、コストの観点から購入対象セルの範囲が絞られたり、航路変更に伴う緊急手配などが発生。実際の運航時に本来必要となるENCを保有しない状況を生み、重大事故につながる可能性がある。

 ナブトールはこの課題解決策として、PAYSを提案する。同社のPAYS方式では、航海計画段階で既に必要十分なENCがECDIS上に備わり、通航した分だけがコンピューター・アルゴリズムによって課金される。このシステムは船級認証を受けている。

 ナブトールの日本法人である日本ナブトールの北野弘章社長は「テクノロジーを活用したPAYSの導入によって、ENCの調達プロセスが人為的に行われないようにすることで、作業負荷やヒューマンエラーの軽減につながる」と語る。

 ナブトールはENCの頒布を基軸に、eナビゲーション・コンセプトに基づいたソフトウエア開発を通じ、プラットフォーム・ビジネスを推進。2月から、船舶の位置情報サービスをさらに進化させた「ナブ・フリート」の提供を開始した。

 ENCなどデジタル航海情報の更新データをタイムリーに船上で受け取る「ナブ・ボックス」に供給される高精度のAIS(船舶自動識別装置)データを収集。「ナブ・フリート」上で、この位置情報と、ECDISや同社のソフトで作成された航路・航海計画、ウェザーニューズ社の気象・海象情報などを連動させる。これにより、異常が発生する可能性がある船舶の陸上の運航支援部門に、アラートを通知し、状況視認を促す。

 ENCの運用などを含めた船員教育と、陸上の運航支援を共に強化し、船上と陸上が一体となった安全運航の取り組みを進める船社を、ナブトールは統合型プラットフォームの構築を進めることで支援する。