海事アカデミア2021 残席僅か
 印刷 2021年03月15日デイリー版4面

記者の視点/五味宜範】造船の海洋事業、環境規制・デジタル化で新展開も

 今年1月、今治造船とジャパンマリンユナイテッド(JMU)の商船営業・設計の合弁会社「日本シップヤード」(NSY)が立ち上がった。同社は基本理念として「船舶海洋分野の技術でお客様と共に伸びる」を掲げている。この中の「海洋」には、浮体式洋上風力発電設備向けの浮体(構造物)などを手掛けたいという意味が込められている。

 造船会社の海洋事業と聞くと、洋上のガス・油田開発に関する設備がすぐに思いつく。甲板昇降型のジャッキアップ・リグ、半潜水式のセミサブマーシブル・リグ、ドリルシップ(掘削船)などの掘削設備や、FPSO(浮体式石油生産・貯蔵・積み出し設備)などの生産設備だ。

 2000年以降、原油価格が高騰した際、海洋資源開発が活発化した。リグやFPSOなどの需要が拡大した際、韓国造船大手が成約を積み上げた。受注金額が船舶と比べ高かったこともあり、当時は有望な事業に見えたものの、14年半ばに原油価格が下落。その後、既受注案件での納期延期や一部契約で解約が発生したことなどで、韓国造船大手では、業績が大幅に悪化した。この後に構造改革や業界再編が起きた。

 韓国造船と比べ限定的だったものの、日本造船も影響を受けた。川崎重工業は17年3月、商船建造の軸足を中国にシフトすることなどを含めた船舶海洋事業の構造改革を発表したが、そのきっかけとなったのが、海洋関連の損失発生による業績悪化だった。

 国内造船各社は、海洋関連事業からの撤退や事業規模縮小を進め、18年には、日本で唯一の海洋構造物専用ドック(長さ810メートル、幅92メートル、深さ14メートル)を抱えていたIHIの旧愛知事業所(愛知県知多市)が生産拠点としての機能を終えた。

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 こうなるのは仕方がないものの、これまで培ってきた技術が途絶えることは残念だと感じていた。だが、ここにきて、再生可能エネルギーの利用拡大の観点で、海洋事業に関係する洋上風力発電導入の動きが活発化してきた。

 洋上風力発電設備は現在、水深50メートルより浅い海底に設置される着床式が多いが、今後は浮体式の需要拡大が見込まれる。NSYの前田明徳社長は「浮体には造船のシーズが生かせる。日本で浮体式洋上風力発電設備の採用が増えるのに、利用できる浮体が海外でしか造れないという状況を想像するだけで、日本の造船会社として許せない」との考えを示した。浮体のビジネスが海洋事業の技術維持・向上、企業としてのもうけにつながることに期待したい。

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 海事産業に関連する社会人や学生が有識者から新たな視点を受け、チームで社会課題解決や新たなビジネスにつながるアイデアの創出・ブラッシュアップを行う「第2回海事DATA/AIアイデアソン」が2月24、25日にオンラインで開催された。

 学生で構成された2チームを含め計8チームがそれぞれ脱炭素化、技術伝承、高齢化などの課題解決策(新サービス)を紹介した中で、浮体式洋上設備に関する新サービスが2件あったことが印象に残った。

 そのうち1つは、海水からの水素製造を中心に、風力、太陽光も利用した究極のグリーンエネルギーを海洋プラントで製造するアイデアだった。

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 環境規制強化やデジタル化進展などで、造船会社の海洋事業の可能性が今後広がりそうだ。洋上風力発電向け浮体に加え、グリーンエネルギーを製造する海洋プラントなど、海洋事業の新たな製品を自身でも考えてみたい。