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 印刷 2021年02月22日デイリー版2面

インタビュー コロナ後見据えた旅客船事業】東海汽船社長・山崎潤一氏、収益安定化へ輸送需要平準化

東海汽船社長 山﨑 潤一氏
東海汽船社長 山﨑 潤一氏

 新型コロナウイルスの感染拡大で旅客船業界は厳しい経営環境に直面している。東京と伊豆諸島を結ぶ航路などを運航する東海汽船は2020年に新造の貨客船、ジェットフォイルを相次いで投入したが、利用客の大幅減など苦境に立たされた。コロナ後も見据えた局面打開へ「収益安定化に向け、輸送需要平準化を図りたい」と話す山崎潤一社長に、今後の経営戦略などを聞いた。(聞き手 鈴木一克)

 ――コロナの感染状況で旅客需要が左右された1年だった。

 「コロナの影響は昨年3月ごろから受けた。6月に都道府県をまたいでの移動自粛が解除されて以降は徐々に利用が回復したものの、最繁忙期の8、9月の東京諸島(伊豆諸島と小笠原諸島の総称)への定期航路利用者数は例年の半数程度にとどまった。感染がやや落ち着いていた10月は東京都もGoToトラベルの対象になったことで復調し、前年の88%の水準に。11月も同86%まで回復した」

 「しかし、11月後半以降、コロナ感染者が急拡大し状況が一変。東京都独自の助成やGoToトラベルも一時停止となり、予約のキャンセルが相次いだ。年末年始の予約数は前年の6割減。年明けに政府による緊急事態宣言も発令され、足元の利用客は前年の8―9割減で完全回復にはかなりの時間がかかると見込んでいる」

 「一方で貨物輸送は堅調。島民の生活用品関連の需要はコロナ禍でも変わっていない。貨物輸送顧客向けには、昨秋に貨客船やグループの貨物船の運航情報などをウェブ上で検索できるサービスを提供し始めるなど利便性を高めている」

 「これまでもリーマン・ショック、東日本大震災などに直面しながら事業を継続してきた。コロナ禍でも本土と島をつなぐ船会社として、島の安全を守りながら定期航路を運航している。今後も足元をしっかり固め経営していきたい」

■離島航路に集中

 ――20年は事業維持・継続に向けた事業の見直し、対策を進めた。

 「30年超続けてきたレストラン船『ヴァンテアン』の事業を昨年6月で撤退した。船の老朽化による維持整備費用の増加、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり事業継続を断念した。厳しい環境下、経営資源を130年の歴史がある祖業の離島航路事業に集中したいと考えた」

 「昨年4月以降、金融機関からの借り入れなどによる流動性資金の確保や利用客の需要に応じた減便、役員報酬の一部自主返上、設備投資の抑制などさまざまな対策を講じてきた。こうした策を講じたことで赤字幅は当初想定の半分程度(20年12月期経常損失3億2200万円)に圧縮することができた」

 ――コロナ禍を経験したことで、事業継続する上での課題がこれまで以上に明確になった。

 「当社航路の課題は、以前から夏季やゴールデンウイークなど繁忙期に利用が集中することが挙げられたが、今夏はコロナで利用がさらに激減し、収益悪化を招いた。当社が利益を確保できるのは7―9月期だけ。収益を安定化させるためには以前から進めていた利用の平準化をさらに推し進め、この構造を変えることが喫緊の課題である」

 「東京諸島各島の人口は少子高齢化が進むため、旅客数全体の2割を占める島民利用の伸びは期待できない。いかに季節を問わず、島外客の観光需要を伸ばすかが課題だ。SNS(交流サイト)も活用したPRに力を入れるほか、顧客が満足できる旅行商品づくりをスピードアップして進めていく」

■ジェット船新造も

 ――20年には貨客船「さるびあ丸」(3代目)と高速ジェットフォイル「セブンアイランド結」を新造投入した。

 「6月就航の『さるびあ丸』は造船技術の高まりで、既存船よりも揺れが少なく快適性が増したという評価をいただいている。同船を使った夏の東京湾納涼船は、新型コロナの影響で昨夏は中止した。今夏は開催予定で、これまでとは異なるコンセプトでクルーズ旅入門となる納涼船を企画したい」

 「7月就航のジェットフォイルは国内では25年ぶりの新造船となり、当社では初となる。これまでは中古船を調達し定期航路に投入してきた。現在運航する3隻も代替が必要な時期を迎えている。新造船投入についても検討を進めていきたい」

 「小型高速多頻度輸送を実現可能にしたジェットフォイルは江ノ島(神奈川県)や木更津(千葉県)、田子の浦(静岡県)、焼津(同)など普段立ち寄らない港からも東京諸島へ臨時運航し、新規顧客を増やす」

 ――山崎社長が会長を務める関東旅客船協会、日本旅客船協会の会員各社もコロナによる厳しい影響を受けている。コロナ後も見据えた取り組みも重要だ。

 「協会会員各社はコロナの感染拡大で過去に経験したことがない極めて厳しい経営環境に直面している。各社は感染症対策を進め、利用客と従業員への安全確保に取り組みながら事業継続を行っている」

 「デジタルトランスフォーメーション(DX)推進に向けたIoT(モノのインターネット)、デジタル化は船員の労働環境改善や働き方改革、利用客が快適に船旅を楽しむ上でも重要。船の自動運航を推進する観点からも大事だ。一方で、海上通信環境は速度・容量の点で立ち遅れている。船でのデジタル化には洋上の通信環境改善が不可欠で、陸上と同じような料金で安定したサービスが得られるように、業界として現在、国に働き掛けている」

 やまざき・じゅんいち 73(昭和48)年成蹊大経営卒、東海汽船入社。00年旅客部長、04年取締役総務部長。09年3月から現職。現在は関東旅客船協会会長、日本旅客船協会会長なども務める。73歳。