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 印刷 2021年02月17日デイリー版4面

記者の視点、鈴木一克】海事産業強化法案閣議決定、内航船員定着へ国が後押しを

 難題となっている新型コロナウイルスへの対応などについて議論が交わされている今年の通常国会。その国会への提出法案として、政府は5日、「海事産業強化法案」(海事産業の基盤強化のための海上運送法等の一部を改正する法律案)を閣議決定した。

 同法案は海上運送法や造船法、内航海運業法、船員法など6つの法律の一部改正をパッケージにしたもの。日本の造船業の基盤強化策が盛り込まれている点に注目されがちな法案だが、本稿では船員の働き方改革・内航海運の取引環境の改善・生産性向上などに向けた内航関連施策を行うための法改正案も多く含まれている点に焦点を当ててみたい。

 具体的には船舶所有者(使用者)による労務管理責任者の選任、荷主・オペレーターに船員の労務管理に係る配慮を求める仕組み構築、全ての船舶管理業者に内航海運業としての登録を義務付け―などの施策が盛り込まれている。

 これらの施策は、内航関係者も出席した交通政策審議会海事分科会の基本政策と船員の、2つの部会における議論の取りまとめを反映させた内容。内航関係者も期待するこれら施策が実現できるよう、多くの関係者の理解を得て同法案の早期成立に期待したい。

 法案の国会への提出、審議も行われていない段階だが、今回の法改正が実現した場合の効果がどのように表れるかにも注視したい。

 注目すべき点の一つとして働き方改革によって、新人船員の定着率が上がっていくかが気になるところだ。

 内航船員数自体は近年、民間船員教育機関出身者も増え、増加傾向だ。50歳以上の人の割合は内航船員の半数を占めるが、30歳未満の船員は年々増加傾向にあり、19年には2割弱まで割合が増えた。

 ただ、多くの船社関係者からは「せっかく若年船員を雇ったものの、定着せずに退職する人が多い」という声をよく聞く。船内という閉鎖空間で、職住一体でさまざまな世代の人と長期間過ごすという特殊な環境に慣れないこともあるだろうが、働き出した船の環境があまり良くなく早期に退職してしまう人もいるという。新人船員などが船で働きたくないと思うような職場環境は、是正することが必要だ。

 今回、国が船員の働き方改革にもつながる「荷主・オペレーターに船員の労務管理に関する配慮を求める仕組み構築」や「船員の労務管理の適正化」を進めることは重要だ。船員確保・定着化へ船内環境改善に向けて奮闘する船社の後押しになる。

 一方で、改革によってコスト増加やこれまで行っていたような輸送サービスを提供することが難しくなる場面も考えられ、荷主などの関係者に理解を得られるか不安視する声も聞く。

 国には今後国会で法が成立し施行へと向かうプロセスで、荷主などの関係者に対して、機会があるごとに船員の労働環境改善を進める重要性を訴え続けてほしい。そのことが安定輸送を担う船員の定着率上昇につながるのではと考える。