webinar0318
 印刷 2021年01月27日デイリー版1面

商社に聞く転換期の船舶ビジネス】(6)住友商事船舶事業部長・豊田高徳氏、トレード事業集約 商機に

住友商事船舶事業部長 豊田 高徳氏
住友商事船舶事業部長 豊田 高徳氏

 ――4月に船舶事業部のトレード事業(新造船、中古船、用船の仲介)を子会社の住商マリンへ移管する決定をした。その狙い・目的は。

 「現状、新造船の仲介を行う場合、建造契約から実際に船が竣工するまでは船舶事業部が手掛けているが、竣工後の用船仲介や船舶管理などは住商マリンが担当している。同一の船舶でも竣工を境に担当する会社が異なっている。こうした分業により、『つかまえ切れていない、取りこぼしている商機があるのではないか』とかねて認識していた。そうした課題の解消を図りたい」

 「トレード事業は、長期的に見てチャンスが多いと思っている。世界の人口増に伴う海上荷動き量の増加や、環境規制強化などを背景にした船舶の代替建造の需要が見込まれるからだ。船舶トレード事業の機能を集約し、そうした商機を着実に捉えていきたい」

 ――移管により変わる顧客サービスは。

 「基本的に大きくは変わらない。ただ、4月1日以降、新造船の主契約は住商マリンが担当することになる。住友商事本体が同契約の履行保証を行うことで、顧客へのサービス品質を担保する。住商マリンのリスク管理機能の構築などを、本体とともに走りながら進めていく」

 ――移管により住商マリンの人員規模はどうなるのか。

 「住商マリンのスタッフは現時点で30人弱。船員やエンジニア、オペレーター(運航船社)出身者などさまざまなバックグラウンドの者が在籍している。ここに4月1日付で本体の船舶事業部から20人強が出向する。合流により、50人強のトレード部隊が誕生する。これに伴い住商マリンは新事務所(東京都千代田区神田錦町2丁目2番地1)に移転する」

 ――船舶事業部に残る事業は。

 「子会社の株主としての主管業務や新規事業の開発などが挙げられる。残る人員は6、7人だ。住商マリンも子会社の一つ。実際に私は船舶事業部長兼住商マリンの取締役でもある。近年の新規事業開発では、ノルウェーの舶用バッテリー関連システム大手コルバス・エナジーとの協業が好例だ」

 「新規事業開発を本体に残す理由は、住友商事の他の部署と連携が必要になるためだ。例えば、次世代燃料の水素の事業を今後進める場合、船舶だけでなく、他の輸送機や街づくり、輸送や貯蔵分野にも関わってくる。それらを手掛ける部署と共に事業を進めることが効果的で、連携しやすいよう本体に残す」

■新造商談回復の芽

 ――2020年のトレード事業をどう評価するか。

 「私が知る限り最も厳しい年となった。これほどまでに新造船の受注に苦労したことは経験がない。新型コロナウイルスの感染拡大で顧客のところに足を運べず商談が進まなかった」

 「新造船の商談は年前半は、全く音沙汰がなかった。だが、夏場以降、海外勢を含め船主の中で、既存船の代替建造については、『値段次第では考えてもよい』という声が聞こえるようになってきた。足元(20年12月)では船価が底だと思う人が増えているようで、少しずつだが成約も出始めている。少し明るくなってきている印象だ」

 ――21年のトレード事業の展望は。

 「19年はSOX(硫黄酸化物)排出規制への対応で新しい商談は少なく、20年もコロナ禍で停滞した。2年続けて不振だったので、その反動で活発化するのではないかと、期待している。汎用(はんよう)船型が出てくる可能性もあると思う」

 ――次世代燃料の動向をどう見通すか。

 「50年までのGHG(温室効果ガス)排出ゼロの達成という目標について、異を唱える者はいないだろう。ただ、現時点で単独で達成できる技術は存在しない。水素はマイナス253度での貯蔵という条件をクリアしないといけないし、現在はアンモニアも製造過程でCO2(二酸化炭素)を排出しており、完全にグリーンなものではない。引き続き動向を注視したい」

■アセット評価増へ

 ――船舶ファイナンスで金融機関に協力するアイデアの進捗(しんちょく)は。

 「用船期間の短期化の中で、これまで主流の船主の企業体力をよりどころにしたファイナンスにはおのずと限界がくるのは間違いない。アセットを評価するファイナンスが増えていかざるを得ない中で、総合商社としてのノウハウを生かせる面もあるだろう」

 ――保有船事業の現状は。

 「バルカーを中心に、自動車専用船、プロダクトタンカーなど計20隻を保有している。一部はパートナーとの共有船だ。19年から船齢の高いものを10隻程度減らしている。今後の船隊整備は様子見だ」

 「船舶管理や船員配乗は外部に委託している。コロナ禍で船員交代が停滞し、負担が増す中、船員の皆さんには安全に運航していただき、大変ありがたく思う。少しでも船員の負担を解消できるよう、当社もできる限り協力していきたい」

=おわり

 (この連載は柏井あづみ、山田智史、鈴木隆史が担当しました)

 とよた・たかなる 92(平成4)年早大法卒、住友商事入社。06年船舶事業第一部兼輸送機プロジェクト部、11年欧州住友商事グループ欧州輸送機部門(アムステルダム)、16年船舶事業部、18年4月から現職。東京都出身、52歳。