webinar0318
 印刷 2021年01月25日デイリー版2面

国内船主の今】(250)船主、航空機を敬遠。商社船舶部、ROE課題に

 「商社船舶部の仲介機能が低下すれば、日本船主にとっても相当の痛手になる」

 19日午後、東京駅に近い喫茶店で商社関係者が重い口を開いた。4人掛けのテーブルを2人で斜めに使いながらの取材である。

■仲介業は苦戦

 商社船舶部は次年度の予算編成を計画するのにあたり、仲介業だけでは収益面で社内基準をクリアできないことが指摘されている。ある商社は保有船事業に舵を切り、ある商社は船舶のデジタル化に活路を見いだす。

 しかし、と前述の商社マンが続ける。

 「商社全体の業績は資源関連がまだら模様で先行き不透明だ。しかし、各部門の予算編成を見てもROE(自己資本利益率)はざっくり5―10%は求められる。新造船の仲介案件、とりわけメンコン(主契約)事業が皆無に近い中で、船舶部にこの水準を求められるのは正直、厳しい」

 造船の再編が叫ばれて久しいが、その影響を最も受けているのが商社船舶部という見方もある。

 商社船舶部は1970年代の高度経済成長期に輸出船を手掛けて以降、その後の制度金融を経て商社ファイナンスに進出。三光汽船の倒産に象徴される85年以後の海運不況により、ファイナンス船が商社に戻ってきたことが、現在の保有船ビジネスの端緒となった。

 商社船舶部は各時代の海運、造船を取り巻く環境に大きく左右されながら、「それでも日本の海運、造船を世界と戦える産業まで押し上げてきた」(前述の商社マン)という自負もある。

 海運ブローカーが続ける。

 「2000年以降、商社船舶部が仲介ビジネスで邦船オペレーター(運航船社)まで手掛けるようになり、海運ブローカーが最も影響を受けた。看板の大きさ、情報量が圧倒的に違う。しかし、今や商社船舶部が仲介ビジネスだけでは生き残りが厳しくなったことで、再び、われわれブローカーに出番が回ってくる可能性もある」(在京ブローカー)

 日本船主にとっては不安もある。

 これまで海外オペ案件の大半を商社に頼ってきただけに、「商社の船舶部が仲介ビジネスから手を引いたら、われわれはどこを頼ればいいのか」(今治船主)という声も聞こえ始めている。

 来期、商社船舶部はどのような予算編成、事業計画を描くのか。船主自身が固唾(かたず)を飲んで見守っている。

■航空機の凋落

 「アジア系の航空機会社で航空機のリース料(の支払い)が滞納しているのは事実だ」

 同日夕、金融関係者が電話取材に答えた。

 新型コロナウイルスの影響で、航空業界の業績悪化は他産業の比ではない。

 日本船主は償却財源の確保として主力の船舶への投資のほか、航空機への投資も進めてきた。航空機市場は米ボーイングと欧州エアバスの2社の寡占化が進んでいるため、「市況性の激しい船舶とは別に、投資対象としてリスクが低いという認識だった」(航空機に投資している日本船主)

 しかし、新型コロナの発生は、寡占化している航空機市場にさえ未曽有の打撃を与えた。

 前述の日本船主が話す。

 「リース会社の話では、米国のネバダ砂漠や豪州に無数の航空機が駐機しているという。実際に現地に行くことはできないが、これだけ世界で航空機の運航が停止していれば、航空機への投資を手控えようという意識になるのは当然だ」(西日本に拠点を置く船主)

 航空機はJOLCO(購入選択権付き日本型オペレーティングリース)の対象として人気を博してきた。しかし、既に昨年時点で観光客が主力だったモーリシャス航空、チリのラタム航空が事実上の経営破綻。「複数の日本船主は、投資家として海外の航空会社向け航空機のJOLCO組成に参加している」(金融関係者)

 現状では、JOLCOの肝である一部のレッシー(リース借り主=航空会社)が航空機の購入を選択できない状況に直面しており、投資家=船主としても償却財源の確保として航空機に投資をするには二の足を踏む。

 地銀関係者が話す。

 「航空機への投資が控えられたことで、逆に本業の船舶への投資が見直された部分もある。海外オペから用船途中での違約金(解約金)の返金で手元キャッシュが厚い船主もいる。こうした船主は新造船の自己資金に手元キャッシュを充当、対象船は造船所のストックボートが目立つ」(船舶融資担当者)

(国内船主取材班)

=毎週月曜掲載