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 印刷 2021年01月25日デイリー版1面

インタビュー 環境変化に挑む ドライバルク部門】(下)日本郵船常務執行役員・浦上宏一氏、貨物と船 バランス回復めざす

日本郵船常務執行役員 浦上 宏一氏
日本郵船常務執行役員 浦上 宏一氏

 ――今期に540億円超の構造改革を断行する。

 「昨年9月のケープサイズ6隻の返船による176億円の特損処理に加え、同12月には長期用船計20隻の返船などで特別損失約370億円を計上することを発表した。長期の貨物契約が付いていない船が対象であり、貨物と船のバランスを回復することが目的だ。ただ言うまでもないが、返船は船主のご了解を頂けなければ進めることはできない。ご納得いただけるようにしっかりとご相談したい」

 ――船隊整備の前提になる荷主企業の事業環境に対する見解は。

 「例えば、日本の粗鋼生産量は2019年度に1億トンを下回り、20年度は8000万トンを割り込む見通しだ。足元(20年12月)では鉄鋼メーカーの生産が復調しているが、各社は生産体制の合理化、機能集約に本腰を入れている。同様に多くの荷主が次の時代へ向け生産体制の見直しを図っており、われわれが取るべき行動は顧客ニーズに合わせて、柔軟に変化していくことだ。配船の柔軟性や契約形態などでいろいろと工夫できる点はあるだろう」

 「中でも環境対応、CO2(二酸化炭素)削減にどれほど貢献できるかという視点も重要だと思う。運航の効率化や次世代燃料の取り組みを通じ、こうした荷主の環境対応のニーズに応えていきたい。23年竣工予定の九州電力向けLNG(液化天然ガス)燃料の石炭船もその一例だ」

■船主と共に質向上

 ――事業環境の変化を踏まえた船隊運営の方針は。

 「現在のドライバルクの運航規模は約400隻だが、貨物契約の短期化などの潮流を踏まえ、一定量の長期固定船腹(自社船、長期用船)は減らしていく。ただ、トータルの運航規模、ビジネスの規模を減らすつもりはない。つまり、貨物の変化に合わせ、船も中短期のものへ置き換わっていくイメージだ」

 「一方で、当社運航船隊の中で船主からの用船が中心になるのは今後も変わらない。豪州の船舶査定・格付け会社ライトシップや資源メジャーによる船質要求が高まる中で、船主と船舶管理面で一緒に取り組むことが増えている。自社船だけでなく用船の品質もわれわれのサービスの質に直結するため、船主と共に運航船隊全体のクオリティーを高めていきたい」

 ――次世代燃料に対する考えは。

 「LNG燃料船の今後の一層の普及については、供給体制も含め全体のチェーンを見据えて、考えていく必要がある。船員の資格要件を含め安全運航をいかに担保していくかも大きな課題になる」

 「20年はBHPビリトン、アングロ・アメリカンによるLNG燃料ケープサイズの商談があり、動向が注目された。契約期間など幾つかの条件面で残念ながら成約に至らなかったが、LNG燃料船がドライバルクで一つの潮流になってきたのは間違いない。初めての試みであるので顧客もわれわれも試行錯誤の部分はあるが、共に乗り越えていくことができると確信している」

 「ゼロエミッションという意味では、アンモニアや水素への関心も高まっているが、実用化は相当先になると思う」

 ――一方、スポットマーケットへの取り組みは。

 「ケープ、パナマックスにおいては不定期船グループを中心に、ハンディではNYKバルク・プロジェクト(NBP)がCOA(数量輸送契約)も含めたマーケット対マーケットで一定の利益を積み上げており、これが重要な柱となっている。また、20年4月には市況エクスポージャー(市況変動にさらされる部分)を一元管理する船隊管理チームをバルク・エネルギー輸送統轄グループに新設した。中長期契約のないケープ、パナマックスのエクスポージャー削減策やFFA(運賃先物取引)の方針の策定などを行っている」

 ――20年のドライバルク市況をどう評価するか。

 「ケープサイズ市況は例年1―3月、出荷地ブラジルの雨季の影響で弱含むが、20年はこれが長期化し5月ごろまで続いた。極東向けでブラジル出しに代わり豪州出しが増え、トンマイルが縮小、船腹の需給バランス上マイナスに働いた。これに新型コロナウイルスの感染拡大によるネガティブなセンチメントも加わり前半は低迷した」

 「ただ、後半は中国経済の回復もあり、復調していった。中国の粗鋼生産量は1―12月で前年同期比5・2%増、鉄鉱石輸入量も同9・5%の増加を示している。前半の低迷は痛かったが、コロナ下においては全体としてよく持ち直してきたと言える」

■船腹供給は限定的

 ――21年のドライ市況の展望は。

 「これまでと同様に中国の動向がカギになる。21年も引き続き粗鋼生産が堅調であれば、輸送需要は底堅いだろう」

 「一方、船腹供給面ではポジティブな面が多い。21年の新造船の竣工は限定的だろう。加えて、22年に控えるバラスト水処理装置搭載義務のモラトリアム(猶予期間)の終了や、船質要求の高度化が、老齢船や安全基準に不安のある船腹の退出を促すだろう。中でもハンディ、ハンディマックスは老齢船の比率が高く、他の船型よりその傾向が強く出るはずだ」

 うらがみ・こういち 84(昭和59)年慶大法卒、日本郵船入社。10年企画グループ長、13年製鉄原料グループ長、16年経営委員、18年常務経営委員、20年6月常務執行役員(名称変更)。

=おわり

 (この連載は鈴木隆史が担当しました)