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 印刷 2021年01月19日デイリー版4面

記者の視点/鈴木隆史】緊急事態宣言下。外国人船員入国可 引き続き堅持を

 「(日本社会全体への)公益性や経済面を考慮し、必要な検疫の要請に応えてもらうことなどを条件に、『特段の事情のある外国人』として外国人船員の入国を引き続き認める」

 緊急事態宣言下の外国人船員の入国について、出入国在留管理庁関係者はこう説明する。

 新型コロナウイルスの感染者数は全世界で増加の一途をたどる。東京の1日の新規感染者数は連日4桁が当たり前になってきた。変異株も発生し、事態は日々深刻さを増している。

 これだけ感染が広がれば、水際対策の徹底を求める世論が強くなるのは自然の流れだ。そうした中、政府は13日、全世界からの新規入国停止措置の例外として認めてきた中国・韓国など計11カ国・地域のビジネス目的の往来を、緊急事態宣言期間中は停止する方針に急きょ転換した。

 そうなると、気になるのは外国人船員の入国の可否がどうなるかだ。日本商船隊への配乗ではフィリピンをはじめとする外国人船員が過半を占める。彼らまで入国が禁止されれば、ただでさえコロナ禍でスムーズには進みにくかった、国内での新造船の引き渡しや船員交代がさらに停滞してしまう。

 国内での新造船の引き渡しは2019年の実績で263隻、月21隻超と一定の規模がある。日本での荷役を予定する外航船は外国人船員であっても日本で船員交代する機会が多い。船員の入国が難しくなった場合の影響は大きく、海運業界では緊急事態宣言下の外国人船員の入国を巡る動向が注目されていた。

 結論としては、冒頭の発言の通り、「特段の事情のある外国人」として引き続き入国が認められる。その一報を受け、海運関係者からは安堵(あんど)する声が上がった。

 この「特段の事情のある外国人」は13日に入国が一時停止になった中国、韓国などのビジネス往来とは別の区分に整理されている。政府はコロナ禍でも、外国人船員については「特段の事情のある外国人」として昨年来、入国を認めてきた。その方針が引き続き維持されることになる。

 一方、コロナの収束の兆しが見えない中で、外国人の入国の全面的な禁止を求める声が根強いのも事実だ。国会議員の中からも「『特段の事情』を根拠に幅広く入国を認める可能性があるのでは」と同規定の乱用を危惧する見方も浮上している。

 確かにむやみに入国可能な対象を広げるのは避けるべきだが、船員が「特段の事情のある外国人」に該当するというのは、日本の経済安全保障の観点からも極めて妥当だと思う。

 四方を海に囲まれ、エネルギー資源の過半を輸入に頼る日本において、貿易量の9割以上を船舶、海上輸送が担っている。その最前線に立っているのがフィリピンなどの外国人を中心とする船員だ。

 感染が広がる中で、船員は医療従事者などと同様に社会基盤の維持に欠かせない「エッセンシャルワーカー」と紹介される機会が増えているが、日本の置かれた環境を考慮すれば、船員の重要性は、普段から広く浸透しているべきことのような気もする。外国人の入国全面禁止の声は今後も上がる可能性はあるが、船員までもがその対象に含まれることはあってはならない。