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 印刷 2021年01月18日デイリー版1面

商社に聞く転換期の船舶ビジネス】(5)三井物産 輸送機械第一部長・白井卓哉氏、輸送機械第二部長・村田浩一氏。4部制で機能先鋭化

三井物産 輸送機械第一部長 白井 卓哉氏
三井物産 輸送機械第一部長 白井 卓哉氏
三井物産 輸送機械第二部長 村田 浩一氏
三井物産 輸送機械第二部長 村田 浩一氏

 ――今年の造船・用船市場をどう見通すか。

 「セグメントによる状況の違いはあるものの、ここ数年、船主や用船者が新規投資を控えてきた反動により、希望も込めて新造船市況、用船市況ともに上昇していくとみている。新規投資では欧州プレーヤーを中心に『環境負荷』を意識した投資行動が一段と鮮明になるだろう」

 ――日本造船業の再編が本格化している。

 「国内の造船業はこれまでも幾度となく荒波を乗り越えてきており、組織のスリム化や無駄の削減が成されてきている。ただ、中韓造船所に対し長期的に伍(ご)していくためには、国内造船業界のさらなる提携・再編は必要不可欠だと考えている」

 「業界再編と各造船所の選択と集中により、スケールメリットやノウハウ結集の効果が発揮され、これまで制限されてきた新たな取り組みや挑戦が実現していくことを願っており、当社もそういったチャレンジをしっかりと後押しさせていただきたい」

 「今後の活路という点では、やはり環境負荷の低減でいかに市場優位性を確保するかが鍵だ。また、今後ますます海運業界におけるエネルギーやコンテナの輸送需要が高まる状況の中、国内造船所が技術面、性能面でどういった手を打てるかが重要と考えている」

■航空と知見融合

 ――昨年4月、船舶事業が属するモビリティ第二本部を3部制から4部制に改編した。

 「従来の商品別組織を組み換え、機能軸で組織を束ねることが目的だ。それぞれの機能の先鋭化を図るとともに、商品の垣根を越えた連携や、多様な人材・チームの高度融合を促し、本部全体の組織強化を図ろうとしている」

 「船舶に関する事業は、第1部から第4部に横断的に存在している。効果や手応えといった意味では、まず単純に部の組織が以前よりもコンパクトになったことに伴い、きめ細かな業務対応と質の高い社内外コミュニケーション、コーチングなどの人材育成が実行できていると感じている」

 「また、基幹子会社である東洋船舶やシンガポールでの社船事業、リベリアSPC(特別目的会社)の管理などを第1部に集約し、管理業務を効率化したことで、これまで以上に営業や機能強化に集中して外向きに力を発揮できる体制となった」

 「第2部は、船舶と航空機のトレーディング事業を束ね、より幅広い投資機会を提供することを目指している。さらに、さまざまなパートナーと共同で進めているアセットトレーディング事業でも船舶・航空の知見の融合を進める」

 「第3部はLNG(液化天然ガス)船を中心とした長期キャッシュフロー付きアセットの保有・運航、第4部はデジタルや環境といった切り口で新規事業開発を担っている」

■カーギルと協業

 ――デジタル技術を活用した新規事業開発にどう取り組んでいるか。

 「当社はデジタルや自律運航技術を通じて、運航効率の最適化や環境負荷低減、安全性向上、船員不足解決に貢献したいと考えている」

 「現在、シンガポールでは現地企業STエンジニアリンググループと共に自動航行システムの実証試験を進めており、技術開発のみならず普及に向けた制度設計・インセンティブ設計も視野に入れる」

 「穀物メジャーのカーギルなどとは国際海運のGHG(温室効果ガス)排出削減で協業し、省エネデバイスの普及が有効な一手との考えを共有している。省エネデバイスの実船搭載・効果検証を積極的に進めることで、普及の一助となることを目指している」

 ――三井物産と三井E&S造船、揚子江船業(中国江蘇省)が共同出資する中国の合弁造船所「江蘇揚子三井造船(YAMIC)」の受注状況は。

 「コロナ禍で厳しい受注環境にさらされているが、海外船主向けを中心に、徐々に受注を重ねている。三井E&S造船とともに船型の多様化や生産性向上を図りつつ、今後も競争力向上に努めていきたい」

■MR型14隻売却

 ――三井物産とAPモラーホールディング(デンマーク)が出資するプロダクト船保有会社マースクプロダクトタンカーズが最近、保有船の売却を進めている。

 「昨年12月の中国リース大手CDBファイナンシャルリーシング(国家開発銀行リース子会社)へのMR(ミディアムレンジ)型14隻売却は、いい条件提示があったことが理由だ。この売船を含めてマーケット環境を見ながら保有船のポートフォリオ最適化を図っており、今後もその方針は変わらない」

 ――海事産業における今後の商社の役割をどう考えるか。

 「『世界中の未来をつくる』ことが当社のミッションであり、挑戦と創造により、日本の海事産業発展のためにこれまで以上にしっかりと汗をかかせていただきたい。デジタル化や環境といった分野においても、積極果敢にチャレンジすることにより、事業を通じて社会の課題を解決し、本邦海事クラスターの一員として業界発展に貢献していきたい」(随時掲載)

 しらい・たくや 92(平成4)年京大工卒、三井物産入社。98年四国支店機械グループ、04年英国三井物産機械グループ、13年経営企画部企画室、17年船舶営業部長、20年4月から現職。兵庫県出身、52歳。

 むらた・こういち 93(平成5)年慶大理工卒、三井物産入社。00年英国三井物産、06年中東三井物産ドーハ事務所、12年東洋船舶、18年経営企画部企画室、20年6月から現職。東京都出身。50歳。