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 印刷 2021年01月14日デイリー版1面

インタビュー コンテナ不足と運賃交渉】オーシャンネットワークエクスプレス(ONE)ジャパン社長・木戸貴文氏、契約内容 多様化へ

オーシャンネットワークエクスプレス(ONE)ジャパン社長 木戸 貴文氏
オーシャンネットワークエクスプレス(ONE)ジャパン社長 木戸 貴文氏

 巣ごもり需要などがけん引し、世界のコンテナ荷動きは空前の活況を呈している。しかし、あまりに強い需要によって運賃高騰に加えてコンテナ不足も深刻化するなど、日本の荷主にとっては厳しい環境となっている。日本発着のコンテナ航路でトップシェアを誇るオーシャンネットワークエクスプレス(ONE)ジャパンでも、日系荷主のための安定した輸送スペース提供に苦心する。ONEジャパンの木戸貴文社長に、今のコンテナ不足への対応や来期の方針などについて聞いた。(聞き手 幡野武彦)

■夏から不足顕著

 ――コンテナ不足はいつから始まったのか。

 「日本でも昨年8月ごろから顕著になった。まずアジアで40フィートハイキューブ(HC、背高コンテナ)が不足して、その余波が日本にも及び、瞬く間に全てのタイプのコンテナに広がった。日本は輸出より輸入が多い貿易構造なので、一定の(空コンテナ)在庫を確保した上で需要地のアジアに回送していたが、中国や東南アジアでの不足が深刻化したことで、日本の在庫量も通常の半分以下と、ギリギリのところまで削減せざるを得なくなった」

 「そこに日本からの輸出の復調が重なり、輸出用空コンテナ確保が厳しくなった。アジア他国ほどまでに深刻化はしていないが、新規や急な増量、事前ピックアップなどの要請にはなかなか応えられない。国内でも名古屋など輸出が多い地域の不足感が強いほか、母船が寄港しない地方港は厳しい状況が続いている」

■早期返却を要請

 ――空コンテナ不足の対策は。

 「ターンタイム(一巡する所要日数)の長い貨物の制限のほか、輸入コンテナの早期返却を強く呼び掛けている。当社は日本発着ではトップシェアなので規模も大きく、他社に比べればまだ融通は利く方だが、現状では綱渡りだ。年間契約の顧客にはしっかり供給責任を果たしているが、予定本数以上となると残念ながら対応しきれない」

 ――かなり先までブッキングが入っていると聞く。

 「12月中旬時点で、3月上旬までブッキングが一気に入るという異常事態もあり、8週間を限度とした対応に限定。顧客ごとのアロケーション内で数量も管理する措置とした。こうした状況なので、スペースとコンテナ確保目的で水増しや他社との重複したブッキングがある程度入ってくるのは分かるが、船積み直前になっての大量のキャンセル発生が大きな問題となった。日本が最終寄港地となる北米航路でも多いときは、1000TEU近くも直前キャンセルが発生したこともあった」

 「ブッキングには空コンテナの割り当てもしているので、直前のキャンセルがコンテナ管理に与える影響も大きい。実際にONEでも日本出しのアロケーションを縮小する残念な結果となったほか、このような大きな機会損失が続くようであれば、コンテナ船社は日本発着サービス自体を縮小することになりかねない。この部分での理解は顧客に強く求めたい」

 ――それは他のアジア発でも同じではないのか。

 「アジア発の場合でも直前キャンセルはあるが、船社もそれを見越してブッキングを受けて、いっぱいになればロールオーバー(積み残し)で対応する。アジアではそれを容認する荷主も多いが、生産部品やサプライチェーンに組み込まれた貨物が主体となる日本の顧客はなかなか認めてくれないのが苦しいところだ。ただ日本でもブッキング精度の改善について真剣に取り組んでいただいている顧客や、ロールオーバーへのご協力をいただける顧客も増えてきていることは感謝したいし、実際に精度もかなり改善してきている」

■運賃底上げ不可避

 ――こうした状況では、2021年度の運賃交渉はどうなる。

 「既に一部では交渉が始まっているが、先を読むのは非常に難しい。実体経済が停滞している中で巣ごもり需要といわれる一般消費財の爆発的な需要の増加で、足元のスポット運賃は20年の契約運賃の3―4倍にまで上昇している。しかし、これがいつまでも続くわけではなく、長期(年間)契約の運賃に直接に当てはまるわけではない。ただタイミングによるが、既に一部終わっている日系以外の年間契約動向をみると、運賃水準の底上げは避けられないだろう。金額については差し控えるが、仮に年間契約を結んだ顧客にはしっかりとスペースを安定的に供給できることを約束したい」

 「今年度で問題になったのが、相互に約束した本数の考え方だ。例えば北米トレードの年間契約ではMQC(最低積み荷保証)を結ぶものの、日系荷主は実際の輸送量より少なめに抑える傾向がある。それが20年度はスペースやコンテナ不足で調整せざるを得ない状況下で契約量に基づいた分配をしたが、実力より低いMQCであった場合、それに応じたスペースしか提供できなくなってしまうということも多くあった。こうしたこともあり、顧客には相互のコミットメントの基となる契約量を重視してほしいと伝えているところだ」

 「契約量にしても、季節性のある貨物を持つ顧客の場合にはどうするか。契約期間を短縮化するか、もしくは繁忙期だけPSS(繁忙期課徴金)を容認するかなど、顧客ごとに適したに調整が必要になる。21年の運賃交渉は従来とは異なり、個別の顧客ごとに契約内容もかなり多様化していく可能性がある」

■状況説明に注力

 ――市況変動の激しいアジア市場の影響を日本も受けているのか。

 「アジア発は繁閑の差が大きい一方、日本発は物量が安定しており、これまでは(インバランスが少ないため)日本だけの特別対応も容認される傾向があった。しかし、アジア発のスポット運賃が高騰して契約運賃の3倍近くまで上昇する中、日本市場の地位が相対的に低下しているのは明らか。そうした状況が続けば日本をカバーするサービスの低下にもつながりかねないので、われわれとしてもこの状況を荷主に丁寧に説明していきたい」

 「2021年の運賃交渉は未曽有の状況ということもあってかなりの難交渉が予想されるが、いったい何がいま起こっており、この状況がいつまで続き、そして物流コストはどうなるのか、まさに顧客から強く求められている情報を提供し、粘り強く説明しながらまとめていきたい。市況も短期間で変動しているが、基本的に現行条件での現行契約の延長は行わない方針だ」

 ――コンテナ不足の原因は何か。

 「もともとはコロナ禍の反動増による世界的な荷動き急増と、それによって世界の主要港がパンク状態となっていることが大きい。例年並みの需要の伸びであれば十分に対応できるだけのコンテナ量はあったが、爆発的な需要の伸びに加えて港湾混雑で数日から1週間も本船が遅れることで本船の実効スペースが減少してスペース不足とコンテナの回転率低下を加速させるという悪循環に陥っている」

 「例えばこうした混乱でコンテナのターンラウンドが15%悪化する一方、貨物量が10%増えると、コンテナの数はさらに25%多く必要となる。19年、20年と2年連続で新造コンテナ生産量が低迷したことも状況を悪化させた要因の一つだ」

 ――混乱解消の見通しは。

 「今のところ、アジア発欧米諸国向けの消費財需要は根強く、北米でも小売業者の在庫率はあまり上昇していない。強い荷況はしばらく続くのではないか。少なくとも2月の中国・旧正月休みごろまでは需要が減少する可能性は低いとみられている」

 「仮に旧正月を機に需要が落ち着いてきたとしても、各地の港湾に影響し始めるまでには数週間から1カ月以上先で、その後、徐々に混雑が解消に向かうとしても正常な状態に戻るまでには数カ月はかかるとすれば、程度の差はあれ、5月の連休くらいまではこの混乱が続く可能性が高い」

■即時ブッキング

 ――来期に向けた業務効率化の取り組みは。

 「ONE(オーシャンネットワークエクスプレス)全体でデジタル技術を活用した業務改善やカスタマーサービス向上のためのプロジェクト『ROOT』が進んでいる。その一環として3月からウェブによる見積もりから契約、ブッキングまで行えるインスタント(即時)ブッキングである『ONE QUOTE』がまず中国などで導入予定で、次いで日本にも導入する。これによりブッキング業務の自動化を進めるほか、トレードレンズなどさまざまな貿易情報プラットフォーム(PF)との連携をしやすい環境になる」

 「デジタルツールを用いたカスタマーサービスも強化する。画一的なものではなく、顧客に合わせた対応を進めていく」

 「(母体となった)邦船3社が持ち寄った複数のシステム間のデータ共有化を一段と進めることにより、顧客の詳細情報を含めたあらゆる情報の管理や共有が進んで業務効率の向上につながっていく」

■"最後"は人を介在

 ――効率化以外のメリットは何か。

 「デジタルツールを活用した自動化によりミスの無いスピーディーな対応が可能となり、カスタマーサービス担当の負担を軽減。一方で営業サポートの強化につなげていく」

 「ONEジャパンとしては社内業務のデジタル化を進める一方、顧客対応の『ラストワンマイル』はしっかり人を介在させる。オンラインブッキングなどでは後れをとってきたが、デジタル化を推進しつつ当社としての特徴を出していきたい」

 ――改めて、2020年はどんな年だったか。

 「新型コロナウイルス感染に翻弄(ほんろう)された年だったが、日本市場のトップ船社として週26便の日本直航サービスを止めずに続けることができた。それでも日本発の荷動きは6月までかなり低迷し、非常に苦しかった。輸出は7月まで前年の7割程度で、8月、9月と月を追うごとに回復し、10月にようやく前年並みの水準近くまで戻すことができた」

 「航路別で見ると、北米など東西航路がまず回復し、それから南北航路が続き、最後にアジア域内となった。これは東南アジア向けの自動車関連の回復が遅かったことが要因だ」

 「ONEジャパンとして20年度は取扱量10%増に目標を設定。増加分は単純増加分に加えて地方港展開や北関東インランドデポを活用したラウンドユース需要をターゲットとしていた。それが新型コロナの影響で物流が混乱。コンテナ不足もあり、輸入から伸ばそうとした地方港展開はうまく進まなかった。そのため、取扱量は昨年並みだが、目標の10%増は未達という状況だ。これは来期の課題になるだろう」

 きど・たかふみ 84(昭和59)年川崎汽船入社。08年Kライン(ヨーロッパ)ダイレクター、14年執行役員。17年10月から現職。61歳。