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 印刷 2021年01月07日デイリー版1面

海運トップに聞く 下期の舵取り】(6)川崎近海汽船社長・久下豊氏、コロナ影響も収益体制強化

川崎近海汽船社長 久下 豊氏
川崎近海汽船社長 久下 豊氏

 ――2021年3月期通期は営業、経常各損益で、1995年の上場以来初となる赤字予想を出すなど厳しい経営環境だ。

 「各事業分野とも新型コロナウイルスの影響を受けてきた。20年4―6月期は移動自粛、製造業の減産といった経済活動停滞の影響を受け、輸送量が激減し収支が悪化した。7―9月期は各部門とも状況は改善し、4―9月期で経常利益(1億3200万円)を確保できた」

 「下期に入り、10、11、12月と想定した計画を上回る収益水準で推移した。さらに良い数字が出せるようもうひと踏ん張りしたい。今冬のコロナ第3波で荷動き、フェリーの旅客の動きに悪影響を及ぼすかもしれないが、そうした状況は織り込み済みだ。現在の予想レベル(売上高356億円、経常損失5億5000万円)を下回らないようにしたい」

 ――10月末には、22年度までの3カ年の中期経営計画を策定した。

 「中計は例年5月ごろに発表していたが、新型コロナの影響もあり、いつもより遅い時期での公表となった。今年度からロールオーバーをやめて、3年間を通してみる計画としている。コロナの影響が今後も長期にわたり継続するとみた上での数字にしている。23年3月期の売上高388億円、経常利益4億5000万円はミニマムの数字。結果としてこれを上回る数字となることを目指していく。また、配当は継続する。これは上場以来欠かさず実施してきたことであり、そこはしっかりと守っていきたい」

■全事業で構造改革

 ――近海船では近年、構造改革に注力している。

 「市況に負けないようコストダウンを進めていく。その市況についてはここにきて回復基調となったので、引き渡しを先延ばししていた船を順次前倒しでデリバリーしていく。また、近海船だけにとどまらず、全ての事業において構造改革を行っているので、今期の純損益段階では苦しい数字が出る可能性はある。ただ、これは将来にわたり安定的な利益を得るためのものであり、しっかりと進めていく」

 「また、ツインデッカーの主要復航貨物のバイオマス燃料輸送には引き続き力を入れていく。昨今は船社間の運賃競争でかなり採算性は落ちてきているが、一方では今後立ち上がるバイオマス燃料を使った発電プロジェクトに伴う長期輸送契約の獲得に力を入れてきたので、これらが動き出すと、収益力がアップしてくる。往航は鋼材輸送をはじめとする輸出貨物を地道に取り込んでいく。シングルデッカーで運ぶロシア炭は今のところ、順調に貨物を取り込めている」

■大分発貨物が課題

 ――内航RORO船では清水(静岡県)―大分航路の強化が課題だ。

 「特に大分発の貨物の取り込みが引き続きの課題。ただ、昨年熊本と大分を結ぶ道路の整備が進んだことで、大分の地の利が良くなった。この状況を生かし、積極的に貨物を取り込んでいきたい。九州の顧客からは23年の時間外労働の割増賃金率の引き上げや、24年にはトラックドライバーの労働時間上限の規制強化に対する危機感をよく聞く。RORO船を使った無人シャーシ輸送への流れが来ていると感じる。これは当社にとっては明るい話。RORO船では12人までドライバーが乗船できるが、有人車の需要を取り込むために船内通信環境の改善などを含めた居住性の改善を検討している。このあたりは現場の声を基に取り組んでいく」

 ――フェリーでは新造船投入など体制強化を図る。

 「6月、八戸(青森県)―苫小牧(北海道)航路に『べにりあ』の代替船として8800総トン型の新造船『シルバーブリーズ』を投入する。『べにりあ』と比べ、ドライバールームの完全個室化や、冷凍食品輸送などの需要に対応するために、車両への電源供給設備を増設する。旅客には特等室の設置やペットが同伴できる一等個室の設置などで、さまざまなニーズに応える仕様となっている」

 「また、昨年4月に宮古(岩手県)―室蘭(北海道)航路を休止し、室蘭―八戸航路の運航を開始した。運航開始のタイミングで緊急事態宣言が出されるなど、コロナの影響もあり、想定よりも苦戦しているが、地元との対話を通して需要の掘り起こしを行うなど、集荷体制を見直すことで収益改善を図っていく。一方の八戸―苫小牧航路はコロナ禍で落ち込んだ旅客の回復が鍵となる」

■洋上風力で好転へ

 ――オフショア支援船事業の今後の展開は。

 「今期はこれまで携わってきた資源探査の仕事が減少し、苦しい状況になっている。来期以降については離島支援や洋上風力の長期案件により収支の好転を見込む。この事業は当社の事業において最も成長が期待できる分野。今年2月には6000馬力のオフショア支援船が竣工するが、当社グループのオフショアオペレーション社が培ってきた技術とノウハウにより、需要の取り込みと業容の拡大を目指す」

 ――将来に向けて環境、デジタルへの対応は不可欠だ。

 「環境とDX(デジタルトランスフォーメーション)にはしっかりと対応していく。環境についてはIMO(国際海事機関)規制への対応と、さらにその先の環境対応技術の研究を進める。そのために、今年早々に次世代環境対応ワーキンググループを立ち上げ、取り組みを深めていく。DXについても昨年からDX推進委員会や部門ごとにDXタスクフォースを立ち上げ、外部の専門知識を持つ人材に来てもらい、スピードアップを図っている。今後さらに取り組みを加速し、デジタル技術の活用を通した業務の効率化を進め、当社の競争力アップにつなげていきたい」

(随時掲載)

 くげ・ゆたか 83(昭和58)年3月神戸大法卒、川崎汽船入社。15年6月川崎近海汽船取締役、17年6月専務取締役。20年6月から現職。兵庫県出身、60歳。