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 印刷 2020年12月11日デイリー版1面

MariTech 海事未来図】e5ラボ、電気推進バルカー開発へ。ROBOSHIPコンセプト、外航版完成

EVカムサマックスバルカーのイメージ(e5ラボ提供)
EVカムサマックスバルカーのイメージ(e5ラボ提供)

 商船三井や旭タンカーなどが出資し、電気推進船(EV船)の開発・普及促進を目指す「e5ラボ」が、電気推進システムを搭載するカムサマックスバルカー(8万6000重量トン型)のコンセプトモデルを完成させた。普及型外航EV船「外航版ROBOSHIP Ver.1・0」と位置付け、三菱造船など国内外のパートナーと協力して開発を進め、湾内や港内のゼロエミッションを実現する。e5ラボの末次康将CTO(最高技術責任者)は「e5ラボはEVとデジタルで海のテスラを目指す。カムサマックスに引き続き、他の大型外航船のEV化を進めていきたい」と意気込む。

 世界初となる大型外航ばら積みEV船のコンセプトは、e5ラボが10日に発表した。同社が考案・企画した「EVパワートレイン」をプラットフォームとして取り入れており、港湾内では蓄電池によるゼロエミッション航行を達成しつつ、ディーゼル発電機を併用することによって、既存船と同等の航続距離・航行速度を可能にする。

 末次CTOはEVカムサマックスバルカーについて「世界で最もクリーンで、最も安全で、最もカッコいいバルカーであり、なおかつ環境、経済、荷主・オペ・船主の5価値を同時に満たす船でもある」と話す。

 同社のパートナーが持つ知見と経験に加え、DC(直流)グリッド、PM(永久磁石)モーター、AI(人工知能)技術を組み合わせた世界最高効率の電気機器により、外航EV船では既存船を上回るエネルギー効率を実現する。

 電気だけでモーター駆動させる完全電気推進仕様のため、乗組員の作業負荷を大幅に減らすだけでなく、トラブルリスクやメンテナンスコストを大幅に低減。また、EV化によって容易にプロペラ2軸化が可能となり、操船性向上による安全性向上、幅広船型による積み高向上にも寄与する。

 実船の建造については「湾内ゼロエミができる容量の電池を搭載した、限定ゼロエミからスタートする」(末次CTO)。

 フェーズ1では容量800―1200キロワットのリチウムイオン電池とディーゼル発電機を採用。続くフェーズ2ではリチウムイオン電池の容量を大きくし、発電機ではLNG(液化天然ガス)燃料や水素燃料電池を導入する。最終的には大容量リチウムイオン電池や全固体電池、アンモニア、バイオ燃料、水素燃料電池を活用した完全ゼロエミッション航行を実現する。

 EVカムサマックスバルカーの建造は国内ヤードを想定。時期は現時点では未定としつつも、最速で2023年末―24年頭になるという。

 他の大型外航船のEV化については、ポストパナマックスバルカー、タンカー、自動車専用船(PCC)、近海船を予定している。

 末次CTOは「EV化できたからこそ、船のデジタル化が可能となった。デジタル化は、乗組員の省力化と安全向上に大きく寄与する。外航EV船は、今後の海運業界におけるゲームチェンジャーとなる船だと自負している」と話した。