印刷 2020年12月11日デイリー版1面

郵船グループ、AI避航 試験成功。「深江丸」大阪湾を航行

深江丸にAI操船支援システムを接続し大阪湾上で試験
深江丸にAI操船支援システムを接続し大阪湾上で試験
本船周囲にバンパー領域を設定しAIが操船と避航を行った
本船周囲にバンパー領域を設定しAIが操船と避航を行った

 【関西】日本郵船とグループ会社のMTI、日本海洋科学(JMS)は9日、神戸大学、大阪府立大学と共同で研究中のAI(人工知能)を活用した避航操船研究の実船試験を行った。神戸大学付属練習船「深江丸」で同船の操船システムとAI操船支援システムをつなげ、実際に大阪湾を航行した。複数の航行船や高速で航行する船との衝突可能性を予知、安全に操船を続けるなど試験は成功した。

 実船試験は国土交通省の交通運輸技術開発推進制度採択課題「人工知能をコア技術とする内航船の操船支援システム開発」の共同研究の一環。AIの一手法で、試行を繰り返し自律プログラムが最適な行動選択を学習する深層強化学習を応用し、最適な避航操船行動を選択できるプログラムの開発を目指す。

 2018年度から3カ年計画で開発を進めており、20年度に入り操船シミュレーターを用いたAIプログラムの評価や、海上試運転でのAI操船システム接続試験などを進めてきた。今回、深江丸で実船試験し、避航操船が正しく動作するか調べた。

 共同研究のAI避航操船は、AIS(船舶自動識別装置)と波長の異なる2つのバンドのレーダーから得たセンサー情報を基に人工知能が把握し、自動で最適な針路を選択する。当該の針路は深江丸に備わるオートパイロット機能に伝送して操船制御した。

 開発したAIは14マイル(約22・5キロメートル)四方を80×80の升目として捉え、周囲の動向を把握する。他船に脅威を与えないよう、先端部から全長340メートルの船12隻分の長さとなる卵状のバンパー領域(安全な航過距離、外洋の場合)を設定した。

 AI開発では、ランダムに発生させた10分間の避航問題を200万ケース、避航判断で2400万回分を学習させた。陸上でのシミュレーションを行った上、より情報量が多い海上での実船試験に至った。

 開発したAIを接続した深江丸は同日午後、神戸大学深江キャンパスの岸壁を出港し大阪湾へ。周囲の状況を確認した上で、関係者の指示でAI操船に切り替えた。AISやレーダーのデータで他船動向を考慮しながら、AIは操舵と避航を続けた。

 試験中、本船前方に針路の異なる複数の船が現れたり、右舷後方から高速船が現れ本船を追い抜くといった状況もあった。関係者たちはECDIS(電子海図表示装置)と目視で監視しながら見守ったが、AIは安全に避航し、関係者から感嘆の声が上がった。