船員支援キャンペーン
 印刷 2020年12月09日デイリー版4面

記者の視点/船木正尋】GHG排出2つの「ゼロ」目標、世界をリードできる技術開発を

 政府は、2050年までにGHG(温室効果ガス)の排出を実質「ゼロ」にする目標達成を後押しするため、脱炭素に向けた研究・開発を支援する2兆円の基金を創設する。菅義偉首相が4日の記者会見で表明した。菅首相は、「成長の源泉はグリーンとデジタルだ」と述べた。政府が来週にまとめる追加の経済対策に盛り込む。

 海事分野では、GHGを排出しない「ゼロエミッション船」やDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した造船業の生産性の効率化、洋上風力など幅広い領域での技術開発が想定される。

 造船業では、既に手持ち工事が1年を切ろうとしている中で、同基金を活用した技術開発は不可欠だ。国土交通省のある幹部は「政府が創設するこの基金を活用して、ゼロエミ船の技術開発を進めたい」と意欲を見せる。

 一方で国際海運界では、IMO(国際海事機関)がGHG削減戦略を策定し、30年に国際海運からのGHG総排出量を08年比40%減、50年に半減という目標を示した。さらには今世紀中のGHG排出「ゼロ」も掲げた。

 11月に開催されたIMOの第75回海洋環境保護委員会(MEPC75)で、GHG短期対策の最終案が承認された。この短期対策の最終案は、日本とノルウェーが共同提案していた「現存船燃費性能規制(EEXI)」と、中国とブラジルの「燃費実績格付け制度」をパッケージ化したもの。特にEEXIは既存船を対象にした規制で、燃費性能の劣る船は出力制限などの規制対応をしなければ市場からの退場を余儀なくされる。

 この短期対策は次回のMEPC76での採択を経て、順調にいけば23年に規制がスタートする見込み。この規制により、副次的に省エネ性能の高い先進船舶の需要が喚起される。

 日本の造船業界はこの国内外での動きを見逃してはならない。

 ◆

 海運・造船・舶用の各海事産業や研究機関・公的機関などで構成する「国際海運GHGゼロエミッション・プロジェクト」は既にゼロエミ船の開発に向けたロードマップ(行程表)を策定し、28年のゼロエミ船の投入を目指している。こうした技術開発について日本は世界でリードしたいとの狙いがある。ロードマップでは、GHGゼロエミッションの実現に向け、「水素燃料船」や「アンモニア燃料船」などのゼロエミ船のコンセプト設計も行った。

 各対象船には、従来型をベースに船型改良、減速・大型化、電気推進を前提としたハイブリット型二重反転プロペラシステムを搭載した。IMOの新造船の設計効率改善(EEDI)計算ガイドラインに基づく試算によると、ベース船型から86%改善する。これらは主に外航船を想定してモデル設計しているが、電気推進などは小型船が多い内航船にも活用できる。

 このロードマップを基に日本政府とIMOが目指す2つの「ゼロ」の達成に向けて、官民が一体となり、基金の活用や造船業の生産性向上のための制度を構築するなどして技術開発を促進してほしい。