日本海事新聞社 物流ウェビナー2
 印刷 2020年12月04日デイリー版1面

旭海運、船内 抗菌・抗ウイルス化。船員が安心し働ける環境へ

実証実験を開始した「旭丸」
実証実験を開始した「旭丸」
居住区のドアにケニファインめっき板を貼り、細菌・雑菌量を比較
居住区のドアにケニファインめっき板を貼り、細菌・雑菌量を比較

 旭海運(根元聡社長)は神戸製鋼所が開発した高機能抗菌めっき技術「ケニファイン」を活用して、船内の抗菌・抗ウイルス化を目指す。旭海運が保有・運航する8万5000重量トン型バルカー「旭丸」で実証実験を開始した。トライアルで効果が確認できれば、他船にも順次採用していく。他社の運航船への提供なども視野に入れる。

 ケニファインは神戸製鋼が独自開発したニッケル系の高機能抗菌めっき技術になる。抗菌効果の即効性や持続性、防カビ性などが特長だ。めっき処理や粉末などで利用でき、水回りのぬめりを抑制する効果もある。

 神戸製鋼はケニファイン技術のライセンスを複数社に供与。そのうちの1社である高秋化学(新潟県燕市)が抗菌めっき処理した商品や抗菌粉末加工した製品が、医療福祉や飲食業、漁業、アパレルなどさまざまな分野で利用されている。

 今回のトライアルでは、神戸製鋼向け鉄鋼原料輸送に従事する「旭丸」の居住区のドアや船橋(ブリッジ)内のECDIS(電子海図表示装置)のフレーム、受話器の持ち手などに、ケニファインを加工したシートやめっき板を貼付。

 1航海を終えた後に、シートやめっき板を貼った場所と貼っていない場所とで細菌・雑菌の量を比較。陸上とは環境が異なる船上での抗菌効果を確認する。シートは濃度の異なる2種類のシートを用意し、効果に違いがあるかを確認する。

 「旭丸」は12月中旬に神戸製鋼の製鉄所がある加古川(兵庫県)に寄港する予定。その時にケニファイン技術の効果を検証するとともに、トライアルの範囲を広げる計画になっている。

 2航海目では、居住区などのドアにケニファインめっき処理したドアノブを取り付ける。ジムルームの床には、ケニファイン濃縮抗菌剤入りの塗料を塗り、適用範囲を広げる可能性を探る。

 また、神戸製鋼向け発電燃料輸送を担うパナマックスバルカー「EL SOL SALE」でも実証試験を行い、異なる気象条件下でも抗菌・抗ウイルス効果があるかを検証する。

 旭海運がケニファイン技術を利用して船内の抗菌・抗ウイルス化を目指すのは、「船員が安心して健康に働ける環境を整えるため」(竹之下登副社長)だ。

 船員は新型コロナウイルス感染症が世界的にまん延する中でも、海上物流の最前線に立ち、人々の暮らしや経済活動を支えている。

 コロナ禍の第2波、第3波が押し寄せてきている中で、船上で働く船員も未知のウイルスに対する不安を募らせている。

 「船員に安心して働いてもらうためにやれることをやる。船員の不安を取り除くことは安全運航にもつながる」と竹之下氏は語る。

 船内の空調用フィルターにケニファイン技術を応用するアイデアもある。「船内の空調はつながっているため、1人の船員が風邪にかかっただけでもウイルスが拡散する恐れがある」(船舶管理安全グループ安全環境チームの川口啓介チームリーダー)という。同技術を活用し、船員の労働環境改善につなげる可能性を探っていく。