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 印刷 2020年12月01日デイリー版4面

記者の視点/山田智史】ドライ事業の構造問題、環境対応の提案力が鍵に

 「コロナ禍による影響だけでなく、構造的と言えるような問題に直面している」

 邦船大手の関係者は、市況低迷長期化などで苦戦しているドライバルク船を取り巻く事業環境についてそう語る。

 「コロナ禍前から日本のドライ貨物の輸入は漸減が予想されていた。産業構造の変化や環境意識の高まりなどによるものだが、その傾向が加速する可能性が高い」ことがその理由だ。

 邦船勢のドライ船事業は、日本の鉄鋼会社や電力会社、製紙会社など向けの原燃料輸送を軸に成長・発展してきた。海外向けのビジネスも増えているが、ベースとなる日本向けの輸送需要が細れば事業の見直しを迫られることは必至だ。

 鉄鋼大手の日本製鉄は粗鋼生産能力を約500万トン削減する。国内需要が減退し輸出市場の競争が激化しても、収益を確保できる体制を整える狙いだ。コロナ禍による鋼材需要急落で業績が悪化しているため、最適生産体制への移行を急ぐ。

 環境機運の高まりで、石炭火力への風当たりは一段と強まっている。国内最大の発電事業者であるJERAは10月に、2030年までに非効率な石炭火力を全て停廃止する方針を表明した。

 鉄鋼原料も発電用石炭も、想定を上回るペースで日本の輸入が減少していく公算が大きい。

 邦船各社は12年以降、ドライ船事業の構造改革を進めてきた。リーマン・ショック前後に整備した新造船が、その後の市況悪化で高コスト船となり、収益圧迫要因になっていたためだ。

 一部不採算船が残っているところもあるが、各社はドライ船事業の市況エクスポージャー(収益が市況変動にさらされる部分)を縮減。市況変動に対する耐性を着実に強化してきた。

 ただ、海運関係者は「海外の案件は競争が厳しい。中国の造船能力を勘案すると市況の上昇も期待しにくい。もう一段の調整が必要になるだろう」と、さらなるスリム化の必要性を示唆する。

 邦船社のドライ船事業は、「うまく舵取りすることが難しい局面にある」(邦船大手首脳)。そういった中で、今後の事業戦略の一つの焦点になると目されているのが環境対応になる。

 菅義偉首相は所信表明演説の中で、50年までに温室効果ガス(GHG)の排出を全体としてゼロにする、脱炭素社会の実現を目指すと宣言。これにより、産業界の環境への取り組みに弾みがつくことが予想される。

 電力業界では燃焼時にCO2(二酸化炭素)を排出しないアンモニアと石炭の混焼が検討されている。鉄鋼業界ではゼロカーボン・スチールの研究開発が進む。海運会社としての総合力を発揮して、荷主に環境対応ソリューションを提案しパートナーと認めてもらえるかどうかが鍵になりそうだ。