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 印刷 2020年11月30日デイリー版4面

記者の視点/岬洋平】コンテナ船市況。「日本特別」論、通じぬ時代に

 「あのサービス、日本専用サービスじゃなかったんですかね。日本の荷動きが良いわけでもないのに、なぜ日本でロールオーバー(積み残し)になるんですか」

 ある日系フォワーダーのスペース調達担当者氏はそう不満を漏らす。

 同氏の言う通り、日本からの北米向け輸出貨物は、中国などアジア諸国の回復に比べて戻りが遅い。ところが、日本発北米西岸向け直航サービスのスペースが逼迫(ひっぱく)しており、日本―北米間では極めて異例の臨時船まで投入される事態となった。

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 理由は、と聞かれれば、日本とアジアの運賃格差に尽きるだろう。

 これまで、日本市場はその他アジアと比較して輸出入のインバランスが小さく、長期契約も多い安定した市場として、荷主も相対的に有利な運賃を享受してきた。また、スペースについても他のアジア諸国を経由しない独立ループが用意され、船社も安定供給を心掛けてきた。

 新型コロナウイルス感染拡大という例年と異なる環境下、今年はこの状況が大きく変わった。

 本紙報道の通り、荷動きの急回復や、コンテナバン不足などで、アジア発北米向け運賃は過去最高水準にまで高騰。中国などではロールオーバーが相次いでいる。

 アジア顧客は繁忙期にプレミアムを払ってでも必要なスペースを確保するという感覚を持っている。このため、一部船社はアジア航路などを使って日本に採算性のいいアジア発貨物を集約。日本発の直航便に接続するという、望まざる「日本ハブ」型輸送が拡大しているようだ。

 他地域でスペースが取れない時に日本を経由する手法は今までもゼロだったわけではないが、「タガが外れた」(前述のフォワーダー)ように日本直航便に他のアジア貨物を集中させる動きが出たのは今年が初めてだろう。日本荷主を軽視しているわけではないが、それだけ運賃格差が無視できない水準にまで広がっていることの証明だろう。 

 日本直航便は日本貨物のため、という不文律を破る悪影響を理解した上での判断。日本は既に北米向けの輸出市場としてはアジア全体の6―7位といった規模で、「日本市場は特別」論を、特に海外船社は理解しなくなっている。サービスプロバイダーにとって「特別」な客とは、料金かボリュームを提供してくれる客だ。

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 デジタル化の進展も、この動きを加速させる可能性がある。

 コンテナ船各社は、ウェブ経由のブッキング(Eブッキング)拡大に注力しており、メールやファクスを含めたアナログでの対応が好まれた日本においても、徐々にEブッキングが浸透してきた。

 次の動きとして、スポット貨物を中心とした即時見積もり型サービスが出てきた。ブッキングだけでなく、オールインの運賃、スペース確約までを、荷主がストレスを感じないスピードで提示。運賃はその時々にスペース状況に応じて刻々と変化する、いわば旅行サイトで航空券を購入するような感覚でコンテナ船のスペースを買うモデルだ。

 繁閑で運賃の大幅な変動に慣れているアジア荷主には浸透しており、船社は日本荷主のスポット輸送も、この即時見積もりでの対応を拡大しようとしている。

 システムの判断には、「日本の荷主さんには安定的に貨物を頂いていますので」などという情緒が介在する余地はない。デジタルの視点から言えば、日本もアジアの中の一市場、という位置付けは、これまで以上にはっきりする。

 標準化がもたらす変化という意味では、デジタル化はコンテナリゼーションに匹敵する衝撃だ。この変化を受け入れ、「特別」ではなくなりつつある日本市場で、船社も荷主も、関係性を再構築する時期に来ているのではないだろうか。