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 印刷 2020年11月16日別版特集1面

船舶管理特集】コロナ禍で奮闘、ニューノーマル模索

船員交代の正常化には時間を要する(ワールドマリン提供)
船員交代の正常化には時間を要する(ワールドマリン提供)

 船舶の保守・整備による船質維持に加え、実運航も支える船舶管理業。その根幹を担う船員は日々、海上で働き、世界の物流を動かし続けている。しかし、コロナ禍による世界的な移動規制で船員交代は停滞し、いまだ正常化していない。船主や船舶管理会社は船員の感染防止に最大限の注意を払った上で、フライト(航空機による移動)や出入国規制の動向も踏まえ、何とか交代を図ってきた。グローバル物流の維持に欠かせない船員交代の着実な遂行をはじめ、奮闘する船舶管理関係者の取り組みを追った。

 コロナ禍で最も影響を受けた船舶管理の業務は船員配乗だろう。新規要員として新たに乗り組む船員の手配、下船する船員の円滑な帰還が停滞し、交代サイクルがスムーズに回らなくなっている。

 「針の穴を通すかのように何とか交代している」

 感染状況に応じて各国の出入国規制やフライト動向が目まぐるしく変わる中、船舶管理会社の関係者からはたびたび、このような声が聞かれる。

 フライトによる船員の交代地への派遣が難しくなったことを受け、新たな手法も確立され始めた。船員供給国に船舶を直接寄港させて交代を図るスキームだ。

 フィリピンやインド、ベトナムなどの船員供給国に船舶が直接出向き、船員の乗下船を図る動きが春先以降、活発化している。

 中でも最大船員供給国フィリピンではマニラ港をはじめ複数の港での交代が可能となり、入港税も減免されるなど、船員交代のための環境が徐々に整備されている。

 一方、こうした船員供給国への直接寄港には交代地へのデビエーション(航路離脱)が伴う。運航プランに影響が生じるため、事前にオペレーター(運航船社)や荷主の承諾が必要となるなど、前広に準備しなくてはならない。

 しかもデビエーション中の船舶はオフハイヤー(不稼働による用船契約の中断)扱い。船舶管理費が発生する一方で、用船料は得られず、船主にとって負担が大きい。

 こうした課題はあるものの、平時の手法が難しくなる中、直接寄港は船員交代のニューノーマル(新常態)として定着し始めている。

■訪船も停滞

 コロナ禍の移動規制により訪船業務も停滞し、船質の維持が課題となっている。中国などの修繕ドックの入渠工事では監督を派遣できず、工期が長期化する事態も生じている。

 「本船状況を正確に把握し、時機を得た的確な対応を行うために、これまでとは異なる手法や工夫が必要だ」

 「今後は訪船できない前提で、これまでと同じレベルの管理を検証できる手法を確立していく必要がある」

 船舶管理関係者らからは対応に苦慮する声が上がる。

 船員配乗業務における感染対策の徹底も求められている。乗船前のPCR検査に加え、乗船中の感染防止策も必須だ。船内で1人でも陽性者が出れば、その船は運航停止に追い込まれる。

 「1隻でも船内感染に起因するオフハイヤーが起きれば、他の船への波及をはじめ、さまざまな問題が起こり得る」

 船主関係者は不安の表情を浮かべる。

 こうした中、一部の船主は船内感染防止に向けた要綱「緊急対応計画」を策定し、船員のマスク着用や船内の消毒剤、マスクの完備などを規定。また、ある船舶管理会社では、万が一、船内で感染者が出た場合に備えた船内での隔離措置の検討も進めている。

 同社の例では毎日船内で行う検温で4日間以上、37・5度以上だった船員は『感染・発症の疑いあり』とみなされ、船内の病室で待機、休息を取らせるという。

 いまだ収束しない新型コロナウイルスの感染拡大。船員の感染防止、航行安全確保のために船舶管理関係者の取り組みは続く。