印刷 2020年11月11日デイリー版1面

中間決算を読む】(3)日本郵船、定航・物流 経常益3倍

表・グラフ

 日本郵船の4―9月期連結決算は、経常利益が前年同期比3倍の474億円と大きく好転した。米国の巣ごもり需要などの追い風を受けたコンテナ船、物流、航空運送の3部門の好調を原動力に増益を達成。コロナ禍が直撃した自動車船とドライバルクの不振をカバーした。

 「コロナ禍の経済への影響は4―6月期で底を打ち、7―9月期に回復局面を迎えた。ただ、セグメントごとに回復度合いとスピードが異なっている」

 丸山徹執行役員は5日のオンライン会見で上期の景況感をそう概観した。

 セグメント別の経常利益は、持ち分法適用会社オーシャンネットワークエクスプレス(ONE)を中核とする定期船部門が2・9倍の284億円に伸長。7―9月期に世界各国のロックダウン(都市封鎖)解除により積み高が想定を上回って回復し、消席率・運賃ともに前年同期を上回った。

 日本貨物航空(NCA)を中心とする航空運送の経常損益は132億円の黒字(前年同期は91億円の赤字)に転換。日本発の航空貨物ボリュームは前年比2割程度減少しているが、旅客便の減便・運休に伴う貨物スペース逼迫(ひっぱく)が続いた。

 物流部門の経常益も3・5倍の81億円と大きく増加。航空貨物フォワーディングの利益率改善に加えて、倉庫や内陸輸送を手掛けるロジスティクス事業が欧米の巣ごもり需要を背景に取扱量を伸ばした。

■不専船は1億円

 定期船の好調の半面、ドライバルク・自動車船・エネルギー輸送で構成する不定期専用船(不専船)事業の経常利益は1億円にとどまり、前年同期の142億円から大幅に縮小した。

 コロナ禍の逆風で自動車船の輸送台数が前年同期比4割減少したことに加え、ドライ部門は期初の市況低迷が尾を引いた。一方、エネルギー輸送は中長期契約を主体に堅調に推移した。

 ドライ部門の構造改革では上期に高コスト用船1隻を期限前返船。さらにケープサイズ6隻の早期返船費用176億円を特損処理したことで、下期以降、年20億―30億円の収益改善効果を見込む。

 丸山氏はドライ部門の黒字化の見通しについて「マーケット次第で何とも言えないが、まだもう少し構造改革としてやるべきことがある」と説明。FFA(運賃先物取引)による収支固定化のほか、船種・隻数は未定だが、下期に引き続き用船の返船を検討する。

 その他事業の客船では新型コロナ対策で休止していたクルーズを11月上旬に再開。ただ、定員の半分以下の旅客数としているため採算は厳しく、「お客さまの安全を第一に確認しながら乗船率を上げていければと考えている」(丸山氏)。

■6年ぶり高水準

 21年3月期の通期連結経常利益は前期比57%増の700億円と、15年3月期(840億円)以来の高水準を見込む。

 上期と同様にコンテナ船の北米航路の活況や物流需要回復、航空運送のタイトな需給と日本出し回復が収益を押し上げる。年間配当を50円(前期比10円増)に増配予定。

 「足元の定期船は通常ならばスラックシーズンに入っているが、引き続き堅調で運賃も高値を維持している。ただ、コロナ第2波などの不透明感を加味して予想を立てている」(丸山氏)

 コンテナ船・物流・航空運送を含む一般貨物輸送事業の通期経常益予想は720億円と前期の25億円から増大。一方、不専船事業は前期比94%減の25億円と明暗が分かれる。

 自動車船の通期輸送台数は前期比3割減を見込み、足元は「米国向けが前年並みまで回復している半面、欧州や資源国向けの回復が遅れている」(同)。今期に高齢自動車船のスクラップ4隻を計画し、短期用船の返船も進める。

 エネルギー輸送部門は原油安が海洋事業の逆風となり、ドリルシップの契約更改に伴う収益悪化が生じそうだ。

 下期の為替前提は1ドル=103円、燃料油前提は適合油トン当たり350ドル。コロナ禍での船員交代の追加費用が7月―来年3月の9カ月間で約20億円発生する見通し。

■フリーCF好転

 財務面ではコロナ禍対策として長期性資金借り入れの実行とコスト削減、フリーキャッシュフロー確保に注力する。9月末時点でコミットメントライン(融資枠)の未使用残高3100億円を確保している。

 4―9月期の投資キャッシュフローは船舶を中心とする固定資産売却や投資抑制によりマイナス226億円(前年同期はマイナス476億円)に圧縮。業績回復により営業キャッシュフローは674億円(前年同期は475億円)に増加し、フリーキャッシュフローが448億円(前年同期は3200万円のマイナス)のプラスと大きく改善している。

(随時掲載)