印刷 2020年10月30日デイリー版3面

日立物流、海外事業・DXに注力。物流シェアリング拠点、中国・アジアに展開

 日立物流は、SGホールディングス(HD)との資本業務提携の見直しに伴い取得した自己株式を、M&A(合併・買収)や提携など新たなパートナーとの「協創」に活用する。手元資金と併せて、海外事業の強化やデジタルトランスフォーメーション(DX)分野に投じ、引き続き地域・事業の領域を超えたエコシステム(経済圏)の形成・拡大を目指す。SGHDとの協業は維持する。また、自動化設備など倉庫リソースのシェアリングを提供する次世代物流センター「スマートウエアハウス(SWH)」を中国、アジアに展開する。

 28日、中谷康夫社長、神宮司孝副社長らが電話会見し、4―9月期(上期)業績と今後の事業戦略を説明した。

 日立物流はSGHDとの資本提携を見直し、経営統合も見送った。9月、発行済み株式総数の約25%に相当する自己株式をSGHDから取得し、SGHDに佐川急便株を全て売却。会見で中谷社長は「協創関係を継続するために、佐川急便株の保有は必要ないと判断した。今後は海外戦略の実行などに、取得した自己株式などを有効に活用していきたい」と説明した。

 日立物流の2022年3月期までの現中期経営計画では、投資枠も700億円以上残っている。自己株式と併せ、フォワーディング事業、海外の3PL(物流一括受託)事業の強化を中心に活用する。

 中谷社長は「SGHDとの協創活動で得られなかったこと、しかしわれわれにとって重要なことについては自分たちで提携先を判断する」とも話し、パートナーには「国内外問わず、同業他社を含め海外事業を担う会社を想定している。またエコシステムの拡大に向けて異業種とのタイアップが必要であれば、自己株式を使う」と語った。

 神宮司副社長は「海外のネットワークを自前で伸ばすには時間もおカネもかかる。強い会社との提携や(グループ拠点の)空白地帯での新たなパートナー、M&A先を検討する」と改めて方針を示した。

 SGHDとの協創は、今後も国内外で深めていく。同社傘下のフォワーダー、エクスポランカとの協創も続け、サービスを拡充する。

 中計の下、DX分野にも力を入れる。「プラットフォーム(PF)群の事業化」として、倉庫PFのスマートウエアハウス、輸送PFの「SSCV」ファミリー、デジタル事業基盤の「SCDOS」を展開する。

 スマートウエアハウスについては実証段階を終えて多拠点化に取り組み、大規模拠点を構築していく。中国、アジアでは現地企業と協業し、日本と同様のコンセプトを展開する。

■海外事業が復調

 21年3月期(今期)業績予想は、バンテックグループを除く「オーガニック」の売上高が前年同期比1%減の5831億円、営業利益が前年同期並みの309億円。国内では増加していた日用品やメディカル、EC(電子商取引)など生活関連の取扱量が平準化する見通し。

 海外事業は回復傾向にあり、北米では自動車産業が7月以降段階的に稼働を再開した。欧州のインターモーダル事業も復調している。

 欧州では13年に買収したトルコのマース社のスペイン子会社を前期に設立したのに続き、今期中にフランス子会社を設立する。来期以降、英国を含め他国に進出し、トルコ―欧州間のインターモーダルとスペイン、フランスの輸送・クロスドック機能を組み合わせ、欧州域内をカバーする輸送網の構築を目指す。

 アジア・中国の域内生産と消費は回復しているが、輸出入は海外市場の影響を受ける。中国の上期営業利益は前年同期からの反動増と航空運賃の上昇により、前年同期の4・8倍に急伸した。また、日立物流バンテックフォワーディング(VHF)では物量の回復を見込むが、構造改革を続ける。

 新型コロナウイルスの感染拡大については、「4―6月期のようなロックダウン(都市封鎖)にも備え、通期予想を立てている」(神宮司副社長)という。

 一方、バンテックの売上高は20%減の761億円、営業利益は61%減の15億円を見込むが、収益性は緩やかに回復している。グループの「輸送コアカンパニー」への転換を図り、輸送ネットワークを強化する。