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2020年10月26日 デイリー版4面
インマルサット・KDDI・JSAT、オンラインセミナーで事例紹介、マグロ漁船に高速通信。船主「若者が集まる船を」
衛星通信サービスを手掛ける英インマルサット、KDDI、JSATモバイルコミュニケーションズの3社は22日、船陸間の高速ネット通信「インマルサット・フリートエクスプレス(FX)」に関するオンラインセミナーを開催した。今年初めに竣工した遠洋マグロ漁船「第一昭福丸」へのFX導入事例を紹介。船主の臼福本店(本社・宮城県気仙沼市)の臼井壮太朗社長は「少子高齢化で漁業に人が集まりにくい中、若者を引きつけられるよう、陸に近い船内環境を整えたい」と語った。
1882年創業の臼福本店は気仙沼市を本拠に遠洋マグロはえ縄漁船7隻を保有。「漁船の概念を壊し、若者が集まりやすい船を造る」(臼井社長)というコンセプトの下、水産庁の協力も得て、みらい造船(気仙沼市)で「第一昭福丸」を建造した。
FXによる高速ネット常時接続に加えて、日本気象協会の航海計画支援サービス「ポラリス・ナビゲーション」を導入。船体や船内に最新デザインを取り入れ、船員のストレス緩和のためにアロマ発生装置も搭載した。
船員は食堂で動画投稿サイト「ユーチューブ」や衛星テレビを視聴でき、船上からの情報発信としてフェイスブックを定期的に更新している。
セミナーの終盤には、アイルランド沖で操業中の「第一昭福丸」をビデオ通話をつなぎ、船長がFXについて「家族や友達といつでも連絡がとれるのが大きい」とコメントした。
臼井社長は、国の基準や通信料を含めて「世界で戦える漁業になっていない」と業界の問題点を指摘。今後の船陸高速通信の活用法として「漁獲管理の厳格化や船上での医療診断ができればいい」と期待を述べた。