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 印刷 2020年10月19日デイリー版1面

本格始動 各社の未来図―無人運航船プロジェクト】A.L.I.テクノロジーズ、ドローンで係船支援

「MEGURI2040」
「MEGURI2040」
A.L.I.の標準型ドローン
A.L.I.の標準型ドローン
小松会長
小松会長

 日本財団の無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」で、商船三井が主導するコンソーシアムに参加し、ドローン(小型無人機、UAV)技術を提供するA.L.I.テクノロジーズ(東京都港区)。船舶に自社開発のドローンを搭載し、人の手で行われてきた係船作業を自動化。ドローンによる係船支援を通じ、同プロジェクトの掲げる「安全運航のさらなる向上」「船員のワークロード(労働負荷)軽減」に寄与する。

・500メートル前から飛行

・画像解析生かす

・風速、指針順守

 「われわれはさまざまな業界にUAV、AI(人工知能)の社会実装を促進させる活動を実施している。今回のプロジェクト参加を機に、海運業界へのこれらの社会実装促進というチャレンジができる」

 同プロジェクト参加の意義について小松周平代表取締役会長はこう語る。

 今回、同社が提供するドローンは井本船舶の内航コンテナ船「みかげ」(749総トン)、商船三井フェリーのカーフェリー「さんふらわあ しれとこ」(1万1400総トン型)の双方かいずれか1隻に搭載予定。両船の運航スケジュールなどを加味し、最終的に搭載する船が決まる。実証航海は早ければ来年春に行われる予定。

 今回のプロジェクトにおいて、A.L.I.テクノロジーズ開発のドローンは船舶が岸壁に一定距離近づくと、ヒービングライン(投げ縄)をつかんだ状態で自動で飛び立ち、港側のビット(係留柱)へセッティングする。その後、再び同船に戻ってくる。

 小松氏は「既にドローンは完成している。人の手では届かないビットの手前300―500メートル地点から飛び立ち正確にセッティングできる」と自信を見せる。具体的に何メートル手前から飛び立たせるかは、実証航海を通じ決定する。

 洋上という特殊な環境のため、気象海象による飛行への影響も注視される。この点について小松氏は「ある程度の防護は備えており、多少海水で濡れても問題ない。風に関しては、ガイドライン(指針)に順守する形で実験を行うが、仕様としては風速10メートル程度であれば稼働が可能だろう」と説明する。

 また今回のプロジェクトでは、ドローンの係船作業を通じた画像解析、クラウドと連携した位置情報のリアルタイムでの把握・更新なども可能という。将来の自動運航の技術の構築にドローンは多方面から貢献できそうだ。

 自動運航以外での海運業界におけるドローン技術活用の可能性について小松氏は「やはりO&M(運用・保守点検)ではないか。内航海運業界では船員の高齢化が顕著。船の点検において、高所や狭い箇所などを、高齢の方が確認するのは難しい。高齢の技術者が高所に登らなくてもUAVを飛ばし、画像を確認することで、そうした課題は解決できる」と指摘する。

 搭載可能な船種については、「船の大きさなどによる制約はない。危険物とされるLNG(液化天然ガス)や石油類を積載したタンカーに搭載する場合は、ドローンに防爆性を施せば良い」としており、さまざまな船種で搭載が見込まれる。

・NKと連携推進

・O&M利用期待

・ホバーバイクも

 A.L.I.テクノロジーズは2016年設立。UAVの研究開発のほか、地上から浮上し走行するホバーバイクの販売、研究開発も手掛ける。また、ディープラーニングやCAE(工業シミュレーション)のための演算力のクラウドサービス、AIやブロックチェーンの分野を中心に事業コンセプトの検討から社会実装までを一気通貫で行う、戦略・技術コンサルティングなど、幅広い事業を展開している。

 海運業界に対しては、今回のプロジェクト参加以前から日本財団、日本海事協会(NK)と共に、AIによるO&Mや船舶の点検の3Dモデル化、補修工事のデータ化に取り組んできた。

 こうしたつながりから今回のプロジェクトへ参加するに至った。

 コロナ禍において同社は商船三井などコンソーシアム参加企業とオンラインの打ち合わせを重ねている。実証航海開始までにドローンの風圧耐性や関連テクノロジーの向上などに努める方針だ。

(随時掲載)