マリンネット×日本海事新聞ウェビナー 深堀り対談 「苦境に立つ日本造船業界の今を読む」
 印刷 2020年10月16日デイリー版1面

本格始動 各社の未来図―無人運航船プロジェクト】JMU、先端技術で提案力磨く

比留井主幹
比留井主幹
JMUディフェンスシステムズが開発した多目的水上自律無人艇
JMUディフェンスシステムズが開発した多目的水上自律無人艇
「MEGURI2040」
「MEGURI2040」

 ジャパンマリンユナイテッド(JMU)は日本財団と共同で進める無人運航船の技術開発プログラムに日本郵船グループなどと共にコンソーシアムを組んで参画。無人運航船に求められる要素技術を取りまとめて本船に搭載するエンジニアリングを担うことで、新造船の提案力に磨きをかける。無人運航システムの完成度が造船所の新たな評価基準になる未来を見据え、先端技術を実装するノウハウを早期に蓄積する。

・エンジ機能担う

・ノウハウを蓄積

・4部署でチーム

 JMUが国内25社と共に参画するコンソーシアムは、郵船グループの日本海洋科学が代表を務める「DFFAS(Designing the Future of Full Autonomous Ship)プロジェクト」。内航コンテナ船を使って2021年度をめどに、輻輳(ふくそう)海域を長距離航海する世界初の無人運航船の実証実験を行う計画だ。

 実証実験はイコーズ(山口県周南市)が船舶管理を担当し、鈴与海運(静岡市)が運航する内航コンテナ船「すざく」(749総トン型)で実施する。実証実験を行う航路は京浜港/苫小牧港(北海道)を想定している。

 「DFFAS」は離着桟、計画航路の運航、避航という本船の一連の動作を自動化することに加えて、通信回線システムを含めた陸上からの監視・診断機能、緊急時の遠隔操船も考慮した包括的な無人運航システムの開発・実証を目指している。

 このため、開発する要素技術は多岐にわたる。参加企業はこれに対応し、 1.自動航行システム 2.フリート支援システム 3.非常対応システム 4.通信および統合情報管理基盤システム―の4グループに分かれて技術開発を進める。

 これら各グループが開発するシステムや機器類を「すざく」に搭載するための設計作業、機器調達などのエンジニアリングを一手に担うのがJMUだ。

 搭載工事自体は外部の改造ヤードに委託するが、搭載後はJMUが機器の動作確認など各種の調整を実施。複数の要素技術を一つのシステムにまとめ、無人運航船に仕上げるインテグレーションの機能を果たす。

 無人運航技術の中核を成すシステムのサーバー類は、40フィートコンテナに一括して格納。他船への将来の導入・普及を見据え、既存船に簡易に搭載できるモジュール型とする。

 モジュールの搭載に加えて、通信機器のアンテナやカメラなどをブリッジ周辺に設置するほか、機関部も無人運航対応へと改造を施す。

 JMUは社内のリソースをフル活用し、4つの部署でチームを組んで今回のプロジェクトに臨む。

 具体的には、「海上物流イノベーション推進部」がプロジェクトマネージャーとして全体を統括。「船舶海洋設計部」が無人運航船の実際の設計業務を担当し、機器と設計をパッケージで提供する事業などを手掛けている「海洋エンジニアリングプロジェクト部」と「海洋・エンジニアリング営業部」が、「すざく」の無人運航対応のエンジニアリングにノウハウを生かす。

・技術をまとめる

・市場拡大に貢献

・将来自社開発も

 要素技術を一つのシステムにまとめるインテグレーションは、JMUが日々手掛けている造船所の基本動作だ。

 「船主の要望をヒアリングして複数の技術を組み合わせ、最適な船舶を設計・提案・建造するのが造船所。自律運航は今後その重要な技術の一つになると認識しており、最先端のプロジェクトに参画することで、インテグレーターとしてのノウハウを習得したい」

 海上物流イノベーション推進部イノベーション企画グループ主幹の比留井仁氏は、JMUが「DFFAS」に参加した狙いをこう語る。

 また同プロジェクトは無人運航システムの開発・実証だけでなく、普及に向けた環境整備などのグランドデザイン(全体構想)の創造をテーマに掲げる。JMUとしても「使いやすいシステムを提供することで無人運航船の認知度向上、マーケット拡大に貢献したい」(比留井氏)考えだ。

 無人運航技術が今後普及していけば、「造船所のビジネスモデルにも変化が生じる可能性がある」(同)と見ている。

 無人になる分、データを活用した運航支援や本船のメンテナンスが一層重要になる見込みだからだ。JMUとしても「同分野にこれまで以上に力を入れていく必要が出てくるだろう」(同)と先を見据える。

 海上物流イノベーション推進部は18年4月、自律運航技術の開発などを担当していた商船企画部先端技術企画チームの機能を引き継いで発足。新技術の調査と、それを生かした商品企画を手掛けている。

 JMUは自律運航技術の調査にかねて、船主や舶用機器メーカーなどと意見交換しながら取り組んできた。今回のプロジェクトではエンジニアリングを担うが、「今後チャンスがあれば、JMUとして自律運航の技術開発に取り組みたい」(同)考えだ。

 子会社のJMUディフェンスシステムズでは15年から、自律無人艇の研究開発を開始。19年度に民間企業が保有する遠隔無線操縦船として初めて、公的機関からの認証を取得するなどの実績がある。

(随時掲載)