マリンネット×日本海事新聞ウェビナー 深堀り対談 「苦境に立つ日本造船業界の今を読む」
 印刷 2020年10月14日デイリー版1面

本格始動 各社の未来図―無人運航船プロジェクト】アイディア、自律運航の共通基盤に

(右から)下川部社長、浮田尚宏取締役COO、千葉福太朗取締役CTO
(右から)下川部社長、浮田尚宏取締役COO、千葉福太朗取締役CTO
海事産業のプラットフォーム「Aisea」の概念図
海事産業のプラットフォーム「Aisea」の概念図
「MEGURI2040」
「MEGURI2040」

 ・IT技術を活用

 ・海難事故などの

 ・社会課題解決へ

 海事産業のデジタル化を支援するアイディア(東京都渋谷区、下川部知洋社長)。同社は三菱重工グループの三菱造船が取りまとめ役を担う無人運航フェリーの実証実験に参加する。アイディアが強みとするIT(情報通信)技術を活用し、船員不足やヒューマンエラーによる海難事故といった社会課題の解決に貢献していく。

 アイディアが参画する三菱造船が主導する無人運航船の実証実験は、日本財団の「無人運航船の実証実験にかかる技術開発共同プログラム」の一つ。

 実際の運航船に無人運航を可能とするシステムを装備し、国内航路で乗組員の監視の下で実証実験を行う。〝スマートフェリー〟の実用化に向けて課題を洗い出すことが目標だ。

 実証実験は三菱造船が新日本海フェリー向けに建造し、2021年6月に竣工する予定の1万5400総トン型の大型高速フェリーで行う。

 具体的には操船の自動化システムの開発や、陸上からの監視・運航支援体制の確立などに取り組む。機関トラブルを未然に防止するための予兆診断機能も検証する。

 アイディアは今回の実証実験で、陸上監視システムの開発を担当する。陸上監視システムの構築に欠かせない本船のデジタル化も担う。

 陸上監視システムは、アイディアが独自開発した海事産業のデジタル化のプラットフォーム「Aisea(アイシア)」がベースになる。

 「Aisea」は船陸間を結ぶデータ共通基盤で、船舶の安全性向上や業務効率改善を目的に開発された。基本機能として「航行支援システム」と「船舶運航管理システム」を備える。

 「Aisea」は高い拡張性が特長だ。最近では東京計器の衝突危険範囲(DAC)技術の最新版を実装した。DAC技術は自律航行を支える避航支援技術の一つと目されている。

 実証実験を行うフェリーのデジタル化は、アイディアが開発し製品化済みの「AgentUnit(エージェントユニット)」を利用する。内航貨物船などに納入実績もある。

 アイディアは船舶のデジタル化について、「航海計器やエンジン、センサーなど機器類の連携を可能にし、インターネットプラットフォームにつながること。プラットフォームを介して船舶の制御系統に指示ができ、船舶から収集したデータを分析・解析できること」と定義。エージェントユニットでそれを可能にした。

 今回の実証実験では、エージェントユニットでデジタル化し「Aisea」につながった大型フェリーに、セキュリティーや自律航行などに関する追加機能を実装する。

 無人運航船は操船に多くのデータを利用する。そのためデータの改ざんや破壊が最大のリスクになる。測定したデータを破壊して誤った判断をさせたり、操船指示が機械に届くまでの間に書き換えを行うことで、安全運航が脅かされる恐れがある。

 ・船長の役割置換

 ・絶対止まらない

 ・高難度システム

 万が一、大型フェリーでそのような事態が発生すれば、乗客の人命を含め大きな損害につながる可能性がある。そのためデータの安全性(情報が改ざん・破壊されていないこと)や真正性(なりすましがないこと)を高度に保持することが求められる。

 自律航行システムは、三菱造船などと開発を進めている。機器類のデータとカメラやセンサーで収集したデータを統合し、AI(人工知能)を利用してリアルタイムで高速処理する。危険を察知して、事故を回避する行動を指示するシステムを構築する。

 下川部社長は「船長の役割がシステムに置き換えられることになる。船長と同じスピード、正確性で予測し判断するシステムを開発することは難易度が高い」と語る。

 その上で下川部社長は「絶対に止まらない、絶対に間違えない、ミッションクリティカルなシステムを構築することが、われわれにとっての最大のチャレンジになる」と力を込める。

 「スマートフェリーの実証実験を成功させた上で、『Aisea』を自律航行のプラットフォームとして国内外に広く提供していければ」と将来的な構想も示した。(随時掲載)