マリンネット×日本海事新聞ウェビナー 深堀り対談 「苦境に立つ日本造船業界の今を読む」
 印刷 2020年10月12日デイリー版1面

本格始動 各社の未来図―無人運航船プロジェクト】イコーズ、デジタル化で安全・快適に

「MEGURI2040」
「MEGURI2040」
今回実験が行われる「すざく」(イコーズのホームページから)
今回実験が行われる「すざく」(イコーズのホームページから)

 国内の内航船舶管理会社で最大規模の管理隻数を誇るイコーズ(本社・山口県周南市、井上清孝社長)。内航海運の世界で、新たな可能性を開きたいという志を持つ山口県の船主5人によって2000年に設立された。現在の管理船舶は21隻。一般貨物船、コンテナ専用船、ケミカルタンカー、LAG(液化アンモニアガス)船など幅広く、船型も259総トンから2464総トンまで多彩だ。

最大級管理隻数

船主の課題対処

変革へ危機感も

 内航海運は中小零細規模の事業者が大半で、船員確保・育成、安全、環境といった課題に個別の船主だけではカバーしきれないケースも目立つ。管理隻数の多いイコーズでは自社の管理レベルアップを図りつつ、規模の小さい船主では解決し難い課題への対応を図れる利点を生かし、事業展開している。

 こうした中、日本財団と共同で進める無人運航船の技術開発プロジェクトに関心を持ち、日本郵船グループの日本海洋科学が代表者を務める「無人運航船の未来創造―多様な専門家で描くグランド・デザイン」をコンセプトとした「Designing the Future of Full Autonomous Ship」(DFFAS)プロジェクトに参画する。

 DFFASプロジェクトの舞台は、同社が所有・船舶管理を行う内航コンテナ船「すざく」(749総トン、積載能力209TEU、本田重工業で19年竣工、鈴与海運が運航)。実験前の21年10月にドック入りする際、自動運航システムなどを組み込んだ機器類を格納した40フィートコンテナ1―2本を船上に搭載。同年12月から同船が運航する京浜―阪神航路で、輻輳(ふくそう)海域における自動運航の可能性などを探る。

 同社では実験中に「すざく」へ乗り込む船員に対して、実験の意義や実験時の各自の役割などを事前に研修。実験中にはプロジェクトが円滑に行えるよう、他の参画企業と共に船、船員をバックアップしていく。

 内航海運業界は船員不足、働き方改革、生産性向上といった課題に直面している。船社・船舶管理会社は現場の立場から解決策を長年模索している。

 畝河内毅・専務取締役は「今後の日本の人口減少を考えると、現場の生産性・安全性、労働環境をより良くするための手段として、最新のデジタライゼーションを取り入れた船陸一体の船舶管理体制という新しいビジネスモデルの構築を目指す」と説明する。

 その上で、「内航海運は少ない人数の船員で大量の貨物を一度に運べるのが特長。こうした利点のあるサービスを今後も継続し、さらに進化させていかなくてはならない。内航海運が問われている課題を積極的に解決し、他の輸送モードの変革にも取り残されないようにしなければならない」との危機感からプロジェクトに参画した。

安全・快適追求

自動運航普及へ

国支援欠かせず

 同社はこれまでも、自動運航船実現に向けた取り組みを推進。今回のプロジェクトに参画する日本海洋科学やMTIなどと共に自動運航に必要な内航船の運動モデルのデータ集積や、機器の遠隔監視・支援などの試験的な検証などを行ってきた。

 「船主、船舶管理会社にとって、デジタル化は現場の仕事をより安全で快適にすることにつながる手段になる」

 畝河内専務はこう指摘し、同社としてデジタル化によって生み出される船員の業務支援システムの提供や、デジタル技術を活用した遠隔支援の取り組みを始める考えを示す。

 具体的には、小型タンカーでの自動荷役装置の搭載や、機関作業を軽減させる陸上遠隔監視・支援システムの採用、船舶搭載カメラによる陸上からのモニタリング・記録の保存などが挙げられる。

 規模の小さい企業が多い内航海運では、デジタル化をはじめとする内航船の姿を変えていく新技術の活用があまり進んでいない。

 「このプロジェクトを通じて、多くの関係者が海運業界を変えていこうと取り組んでいる。こうした取り組みが内航業界全体に伝われば、多数の内航事業者が自動運航船に関心を持ってくれる。国内で自動運航船が普及する流れが強まってほしい」(同)と訴える。

 内航での普及に向け、行政など関係者の理解・協力は欠かせない。畝河内専務は「内航海運にはさまざまな規制がある。現場を含む社会がデジタル化、技術革新でもたらされる利点を得るためには、行政による技術開発支援や、規制緩和への理解が必要不可欠だ。国などに対して、普及に向けた施策の展開を求めたい」と語る。

(随時掲載)