マリンネット×日本海事新聞ウェビナー 深堀り対談 「苦境に立つ日本造船業界の今を読む」
 印刷 2020年10月09日デイリー版1面

旭タンカー、ゼロエミEV船2隻発注。世界初。興亜産業・井村造船で建造

電気推進タンカー(イメージ図)
電気推進タンカー(イメージ図)

 旭タンカーは8日、世界初のゼロエミッション電気推進タンカー(EV船)2隻を発注したと発表した。船型は499総トン型。内航タンカーを手掛ける興亜産業(本社・香川県丸亀市)が第1船、井村造船(同・徳島県小松島市)は第2船を建造する。2隻は大容量リチウムイオン電池を動力源とし、舶用燃料供給(バンカリング)船として東京湾内に就航する。船価は同型船に比べ1隻当たり約6割増となるものの、低環境負荷、船員の労務負担軽減の実現や、災害時の電気供給も可能なため、建造に踏み切った。(2面に関連インタビュー)

 建造契約は9月に締結した。第1船は2022年3月、第2船が23年3月の竣工を見込む。給配電・推進システムなどを含むシステムインテグレーターは川崎重工業。

 旭タンカーの内航船隊は、6000キロリットル積み以下で120隻規模。このうち平水区域で運航するバンカリング船は6隻程度で全船用船しており、今回建造する2隻は初の自社船となる。

 2隻は、旭タンカーのほか商船三井、エクセノヤマミズ、三菱商事が出資する「e5ラボ」のデザイン「e5タンカー」を適用する。船の基幹エネルギーシステムを完全電化することで、通常の主機関直結駆動と比べ、二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、ばい煙などのゼロエミッション化を達成。騒音や振動を抑制することで乗組員の労働環境と港湾周辺環境に配慮する。

 推進力の電動化だけでなく、各種自動化設備やIoT(モノのインターネット)を含む多様なデジタル技術を採用。乗組員の船内労務負担軽減と運航効率向上を図る。

 さらに、災害時に被災地で電力供給ができる点も旭タンカーは強調する。2隻は「緊急時給電用洋上大容量バッテリー」として、船内のバッテリーに貯めた電気を非常用電源として陸上で活用することが可能。大規模災害時でのBCP(事業継続計画)対策や地域LCP(生活継続計画)への貢献を目指す。

 2隻の建造と並行して、関連するインフラ整備に向け、e5ラボに出資する4社に、出光興産、東京電力エナジーパートナー、東京海上日動火災保険を加えた7社により「e5コンソーシアム」がすでに立ち上がっている。旭タンカーとe5ラボは、今回建造する2隻を「緊急時給電用洋上大容量バッテリー」として利用することも視野に、東京電力エナジーパートナーと共同で検討を進める。

 このほか、e5ラボでは、建造コストの増加を既存船比で5%以内に抑える普及型(廉価版)EV船「ROBOSHIP」と、通信、IoT、ソフトウエアをパッケージとした統合システム「ROBOSHIP BOX」の開発に着手している。