マリンネット×日本海事新聞ウェビナー 深堀り対談 「苦境に立つ日本造船業界の今を読む」
 印刷 2020年10月08日デイリー版4面

記者の視点/梶原幸絵】進む「サプライウェブ化」、ロジ情報の活用が重要に

 政府の「脱ハンコ」が話題になっている。河野太郎行政改革相が各府省に見直しを求めたところ、9月末時点の全府省の回答から、一定件数の申請のある行政手続きの9割以上で押印廃止が検討されることになったという。

 これまでの押印の大半は、単なる慣習で必要性が低かったのかと疑問が湧くが、押印の廃止で行政手続きのデジタル化も進めやすくなりそうだ。ただデジタル化といっても、単に書類のフォーマットを電子化しただけでは効果は限られるだろう。これまでの申請プロセスも簡素化・効率化しなければ、手間が増す可能性がある。

 デジタル化に当たっては、ITに関する知見も必要だ。コロナ禍では、日本が完全にIT後進国であることがあらわになった。10万円の特別定額給付金の手続きでは、電子データを手作業でチェックしていることが世間に驚きを与えた。

 背景には「官僚自らが考えず、システムインテグレーターに丸投げしながらも、余計な口を挟んできたことがあるのではないか」と物流企画に携わっていた大手自動車メーカーOBは語る。官僚は「頭と手も自ら出すべきだ」とも。

 同じことはデジタル化に限らず、業務の外部委託全般に言える。物流分野もしかり。物流を丸投げしていたためにブラックボックス化してしまったという荷主の例は少なくない。

 外部委託していても、荷主が自ら物流やロジスティクス、SCM(サプライチェーン・マネジメント)の知見を持ち、業務を管理する必要性は高まっている。人手不足でコストが上昇する一方、物流現場の疲弊が進み、物流の安定性・継続性が危ぶまれているためだ。

 コロナ禍により、サプライチェーンの見直しも進めなければならないこともある。世界各地のロックダウン(都市封鎖)でサプライチェーンを固定するリスクが鮮明になったため、ローランド・ベルガーの小野塚征志氏によると、調達先・納品先や輸送時手段をより柔軟に組み替えられるサプライモデルが求められている。チェーン(鎖)ではなく、柔軟な取引関係のもと状況に応じて最適な調達先・納品先を選べるクモの巣状の「サプライウェブ化」が進むという。

 これについて、先述のOB氏は同氏の所属していた自動車メーカーでは災害時の経験を踏まえ、これまでに1社発注部品の複数社化、在庫配置と量を見直すといった海外サプライチェーンの短縮化、数次先のサプライヤーまでの諸元の把握などサプライチェーンの見える化を進めており、それはサプライウェブ化されたチェーン管理と言える、と解説する。

 加えて、製造業の命であるモノづくりで、効率的に必要なモノを必要な時、必要なだけ造るためにはロジスティクスが必要だという。サプライウェブの世界では、ロジスティクス情報はますます複雑になるだろう。荷主は物流やロジスティクスの業務にしっかりと入った上で、ロジスティクス情報を活用し改善と付加価値の創出に生かしていくことが今後のカギになりそうだ。