マリンネット×日本海事新聞ウェビナー 深堀り対談 「苦境に立つ日本造船業界の今を読む」
 印刷 2020年10月01日デイリー版4面

記者の視点/佐々木マヤ】物流DXの課題、商慣習などの意識改革が不可欠

 国土交通省はこのほど、次期物流大綱の第2回、第3回検討会を開いた。オンラインで傍聴したが、主に「DX」(デジタルトランスフォーメーション)や「標準化」といったワードが議論の的になった。

 物流分野のDXには、莫大(ばくだい)な投資が必要になる。委員からは回収のめどが立たない中でどう進めるべきか、という質問が出た。ローランド・ベルガーの小野塚征志パートナーは、世界のプラットフォーマーになる可能性があるアマゾンやグーグルの名前を挙げ、「日本ではSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)にも参加している物流3社が基盤となるプラットフォーム(PF)をつくり、国際競争力の種にすることを期待したい」と話し、大手物流企業が業界の「リーダー」となって、基盤をつくり、普及を目指す方法を提起した。

 対して、日本通運の堀切智副社長は投資リスクに言及。「(物流会社は)顧客のビジネスモデルが途中で変わるリスクを考えなければならない」と指摘するなど議論が白熱した。

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 DXへの障壁となっている課題の中で、とりわけ印象的だったのが商慣習の問題だ。

 具体的には「データと紙伝票が混在し、全てデジタル化できていない」「納入時に物とデータが一致しているにもかかわらず、検品作業が発生する」―など。日立物流の佐藤清輝執行役専務は業種業界をまたいだ荷役機器・箱サイズなどの標準化や対面・紙・はんこの排除など高度なデジタルシステムへ対応した規制の検討、さらに中小企業を中心としたDXの普及促進に資する財政支援が必要とし、業界全体のデジタル化推進を後押しする補助事業の設置・継続を提言した。

 別の委員からは伝票レス化や事前出荷データ(ASN)活用によるフレキシブルな納品条件など商慣習の見直しを提起する声が上がった。

 アスクルの池田和幸ECR本部副本部長ロジスティクスフェローからは「ルールだけつくってもなかなか実行しないというのが物流現場。実行状況をモニタリングできるような体制ができると、一気に進むのでは」との指摘もあった。

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 第3回ではデジタル人材についても議論が交わされた。経済同友会の山内雅喜委員長(ヤマトホールディングス取締役会長)はデジタル物流人材について、物流各社が競争を行う前段階に当たる大学教育の場を活用し、産官学が積極的に関与していく必要があると訴えた。有識者からは「物流人材は最適解を科学的に求めるOR(オペレーションズ・リサーチ)人材と現場の作業者と手分けして育てる必要がある。物流を大学で学んだ人や社会人になってから携わった人など、採用する企業側が幅広い層を獲得することで、結果としてさまざまな分野の人材が総合的に物流に携わるのが良い」とする意見も出た。

 物流現場の力は「人」。デジタル化で改革が必要なのは設備やPFなどアセットだけではない。使う人の意識や考え方を変えていくこともDXへの大きな課題といえる。人材への投資が不可欠だ。