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 印刷 2020年09月29日デイリー版1面

インタビュー 次世代の自動車輸送】日本郵船常務執行役員・曽我貴也氏、LNG燃料+αでCO2削減

日本郵船常務執行役員 曽我貴也氏
日本郵船常務執行役員 曽我貴也氏

 日本郵船は環境負荷の低いLNG(液化天然ガス)燃料に対応した7000台積みの自動車専用船「SAKURA LEADER」を、日本などからの完成車輸送サービスに投入する。同社は既存の自動車船隊を次世代環境対応船に順次代替していく計画で、「SAKURA LEADER」はその第1船になる。自動車輸送本部長の曽我貴也常務執行役員に環境負荷抑制に向けた取り組みなどを聞いた。(聞き手 山田智史)

 --本邦初の大型LNG燃料船として、10月に「SAKURA LEADER」が就航する。

 「主要顧客である自動車メーカーは、部品の調達から自動車の販売・配送に至るサプライチェーン全体で、温室効果ガス(GHG)の排出削減に向けた取り組みを強化している」

 「顧客のサプライチェーンの一部を担うものとして、完成車輸送に関わる部分でCO2(二酸化炭素)排出量を減らすことは、顧客に対する使命であるとともに、われわれが今全社で取り組んでいるESG(環境・社会・企業統治)経営の推進の点でも重要な施策だと考えている」

 「LNGへの燃料転換もその一環だ。従来の重油からLNGに切り替えることでCO2排出量は約2割減らせる。船型改良や他の先進技術も組み合わせることで、現在主力の6400台積みの自動車船に比べて、車1台当たりの輸送において排出するCO2の量は約40%削減できる」

■B&Bを推進

 --IMO(国際海事機関)は国際海運からのGHG総排出量を2050年までに08年比半減する目標を掲げている。

 「LNG燃料を採用しただけではIMOの50年目標は達成できない。ただ、同目標を達成できるとみられるアンモニアや水素などの次世代燃料が実用化されるには時間がかかる。既に技術が確立しているLNGが、重油から次世代燃料へ橋渡しをする役割を担う」

 「ゼロエミッションを実現する次世代燃料船の実用化まで、これから更新建造する自動車船は全てLNG焚(だ)きにする。重油を焚く既存船隊の中に、LNG燃料を焚く新鋭船をブレンドしていくことで、全体のCO2排出量の低減を図る。この取り組みをB&B(ブリッジ&ブレンディング)と呼び、推進していく方針だ」

 --LNG燃料プラスアルファでCO2排出削減を目指している。

 「LNG燃料とバッテリーを併用したハイブリッド船や、LNG燃料とバイオ燃料の組み合わせなどが考えられる。バイオ燃料はLNGと親和性が高いとされる。LNG燃料プラスアルファで、CO2排出削減を加速度的に進めたい」

 「欧州域内で自動車輸送を手掛ける関係会社のUECC(ユナイテッド・ヨーロピアン・カー・キャリアーズ)は、LNG燃料船2隻を運航しているほか、LNG燃料とバッテリーのハイブリッド船3隻も建造している。入出港時の推進力をバッテリーで賄うことで、エネルギー効率を高める狙いだ」

■15年間で40隻代替

 --LNG焚き自動車船の2隻目は22年に就航する。今後の発注計画は。

 「LNG燃料の先にある次世代燃料でのゼロエミッション船が実用化されるのは、30年代半ばと予測している。当社の自動車船隊は100隻強。本船の耐用年数は27-30年になる。現在の船隊規模を維持するとして、これから30年代半ばまでの約15年間で代替しなければならない隻数は単純計算で約40隻と見積もっている」

 「この規模感とスピード感を前提に、それらに配乗する乗組員のトレーニングなどを計画的に進めていく。まとまった隻数を建造するため、造船所の協力も欠かせない」

 --陸上輸送やROROターミナルでも環境負荷削減に力を入れている。

 「陸送ではAI(人工知能)を組み込んだソフトウエアを活用し、キャリアカーの最適ルート選定を支援している。また、陸送から海上・河川輸送、鉄道輸送へ輸送モードの転換にも対応している」

 「ベルギー子会社がゼーブルージュ港で運営しているROROターミナルでは、今年の年末に風力発電機を稼働させる計画だ。電気自動車(EV)用の充電器も設置し、EVの普及に備える。PDI(納品前点検・補修等)施設で使用する洗浄水も再利用している」

 「ゼーブルージュ港では今年10月から、電動トレーラーで完成車6台を乗せた台車をけん引するトライアルを行う。省人化を図るとともに環境負荷も下げる狙いだ」

 --コロナ禍を受け4月以降に完成車の荷動きが急落した。

 「8月の日本・アジア出しの輸送台数は前年同月の80%まで戻ってきた。5月と6月は50%を割り込んだ。9月、10月は85%程度まで戻る見込みだ。本年度全体では前期の8割程度の回復を予想している。荷動きの回復は仕向け地によってまだら模様だ」

 --自動車メーカーは100年に一度の変革期を迎えている。自動車輸送事業の舵取りについて。

 「EVや自動運転が普及すれば、販売方法もアフターケアも変わる。完成車の輸送・配送の在り方も変わってくる。変わり方次第だが、そういった変化に柔軟に対応していく」

 「物流に関しては、完成車と生産部品という垣根が取り払われる可能性が高い。当社グループでは完成車物流は日本郵船が、部品物流は郵船ロジスティクスがそれぞれ担当している。両社のサービスの融合がわれわれの目指す方向性になる可能性がある」

 そが・たかや 84(昭和59)年一橋大商卒、日本郵船入社。09年NYKロジスティクス(タイランド)社長、10年自動車物流グループ長、15年経営委員・自動車船第一グループ長、自動車船第二グループ長兼務、18年常務経営委員、20年常務執行役員(名称変更)。札幌市出身、60歳。