MariTech Webinar Japan 2020 <日英同時配信>
 印刷 2020年09月28日デイリー版2面

国内船主の今】(235)オープンハッチの出口戦略。造船・ケープや近海船に不安も

 「ギアバルクの出口戦略がどうなるのか、結論が見えない」

 連休明けの23日午後、在京の金融関係者から1本の電話が入った。

■転売は成立するのか

 オープンハッチ保有・運航のギアバルク・ホールディングス(本社・スイス)は5月上旬から日本船主に支払う定期用船料を変更、プール(協調配船)での出来高払い(Pay as you earn=PAYE)にしている。このことは周知の通り。

 金融関係者の指摘する「出口戦略」とは、ギアバルクの債務にうまみはあるのか、という点にある。

 金融関係者が続ける。

 「2008年9月に発生したリーマン・ショック後、ドライ市況の暴落でオペレーター(運航船社)からの減額要請に苦しむ船主から複数の中型バルカーを購入した。売船価格はほとんどこちらの言い値だった。その後のドライ市況の回復で結果的に転売利益を確保できたが、ギアバルクのオープンハッチ型の場合、そもそも転売が成立するのかどうかが分からないのだ」(在京の金融関係者)

 実はギアバルクが運航するオープンハッチに興味を持つ金融関係者は複数存在する。国内船主取材班への問い合わせだけでも、ファンド、リースを含めた複数の金融関係者から同様の疑問が投げ掛けられている。

 ギアバルクは定期用船契約の期間を25―30年などに延長することで「面積を変えずに支払いピッチを見直す」方針を日本船主、地方銀行に説明している。

 ギアバルクの担当者が7月中下旬に来日、中国、四国、九州地方で説明した際は、「ギアバルク側の趣旨は理解できている」(呉船主)という意見もあった。しかし、一部の地銀、メガバンクがギアバルクの「PAYE」について実質的な減額として強硬に船主に対しリスケ(返済計画の見直し)を認めていないのは確か。特にメガバンク系の反発は強い。

 オープンハッチ船の売買が成立する市場が形成されるのか。ギアバルクと契約を結ぶ日本船主が簡単に離脱できない理由もそこにある。

■優先順位低い「造船」

 25日夕方、数日前に国内船主取材班が造船支援について質問した金融関係者から電話での回答が入った。

 「国土交通省の主導で造船の支援策が打ち出されているが、メガバンクの資金支援の優先順位は 1.自動車 2.JAL(日本航空)・ANA(全日空) 3.JR各社―の順番であり、地域経済に影響が大きいといっても造船への金融支援は後手に回らざるを得ない」(メガバンクに近い関係者)

 新型コロナウイルスの影響で日本の基幹産業が軒並み赤字を計上。前述のメガバンクに近い関係者が説明した資金需要の高い上位3業種は「いずれも平時には業績が好調だった会社であり、新型コロナが不振の理由と明確に分かっている業種」と説明する。

 翻って造船はどうか。

 中手造船関係者にこの意見をぶつけてみた。

 「その質問の答えは海運、造船業界の人なら誰でも分かるはずだ。造船は構造不況以外の何物でもない。とりわけ、海運大手が浮上したとしても、鉄鋼関係、つまりケープサイズや鋼材を扱う近海船の先行きは現時点ではかなり不透明だ」(中手造船所関係者)

 海運大手はオーシャンネットワークエクスプレス(ONE)、航空貨物、物流など平時には採算性の悪化が目立っていた部門が、くしくも新型コロナの影響で運賃や輸送需要が増加した。

 しかし、日本郵船が中間期にドライバルク船の特損処理を計上予定しているように、本業の原材料、素材輸送は厳しい状況にある。

 とりわけ鉄鋼不況が鮮明となる中、原料輸送の減少と同時に出荷に当たる鋼材輸送のマイナス影響が造船所にも出ている。

 海運ブローカーが話す。

 「鋼材輸送がここまで減少するのは想像がつかなかった。一部は近海船の新造船の引き取りを遅らせている状況の会社もある。造船所としても近海船を建造するどころか、引き渡しさえ困難な状況になりつつある」(在京ブローカー)

(国内船主取材班)

=毎週月曜日掲載