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 印刷 2020年09月17日デイリー版1面

海事局、造船SC最適化へ新事業。建造情報共有・部品共通化、再編計画策定も支援。企業間連携を促進

 国土交通省海事局は造船・舶用工業の企業間連携を後押しするため、造船のサプライチェーン(SC)の最適化に向けたモデル事業を来年度から開始する見込みだ。造船所間では、設計データや生産システムに一定の互換性を持たせ、納期短縮や受注能力の強化につなげる連携を想定。また造船所と舶用メーカー間の建造情報の共有による生産性向上や、部品仕様の共通化による複数造船所での共同調達などを実現する事業を想定する。このほか資本提携や買収など、事業再編に関する計画の策定を支援する事業も準備している模様だ。

 海事局は2021年度予算の概算要求に、造船・舶用工業の連携強化に向けたSC最適化モデル事業と事業再編に関する計画の策定支援事業、両事業に必要な費用を盛り込む方向で調整を進めているようだ。

 SC最適化モデル事業は課題に応じて複数検討。予算が確保されれば21年度に入って準備が整い次第、参加を希望する造船所・舶用メーカーなどを公募する考え。

 課題の一つが、造船会社間の連携だ。

 現状は造船所が使用する生産設備やそれを稼働させるための設計・生産データ、生産管理システムなどが各社で異なっており、互換性がないことが造船所同士の連携・協業が進まないボトルネックになっている。

 これに対しモデル事業では、造船所間で生産の計画や情報を連携させることで、工場の設備などに応じて建造作業を分担できるようにすることを検討している。

 例えばA造船のB工場は船体ブロックの生産に特化し、C造船のD工場で組み立てや艤装を集中的に行うなど、拠点ごとに役割を明確化。その上で一体的に運用し、納期の短縮やロット受注への対応力強化につなげる。

 2つ目が、造船会社と舶用メーカーの連携。

 従来は造船所・舶用メーカー各社で舶用品・部品の受発注のフォーマットが異なり、手配が煩雑になりがちだった。また、造船所が協力会社など舶用品の発注先の生産状況や計画などをタイムリーに把握できず、仕様や納期の変更に対応しづらかった。

 モデル事業では造船所や舶用メーカー、関係協力会社間で生産情報を共有。これにより、舶用品・部品の効率的な受発注・生産を可能とし、関連企業間で抜本的な生産性の向上を図る。

 加えて、産業全体に関わる課題も存在する。

 そのうち生産に関するものに対しては、舶用品・部品の仕様などを共通化し、複数造船所での共同発注や共同調達、部品の融通をできる環境を整備。これを舶用品などの安定的な調達や設計・生産の効率化につなげ、造船所・舶用メーカー双方にメリットを提供する事業を検討する。

 一方、舶用品・部品の仕様は、当該製品の競争力の源泉になっているケースがある。

 このため、仕様を共通化する品目については、造船所・舶用メーカーにメリットがあるものを業界の実態を踏まえて慎重に検討する。

 また試験に関する課題に対しては、ICT(情報通信技術)を活用し新造船の海上試運転や工場試験の手法を新たに構築、リモートでの作業を可能にする事業を検討する。

 足元では新型コロナウイルス感染拡大に伴う技師の移動制限により、新造船のコミッショニング(性能検証)が停滞するケースが出ている。こうしたアフターコロナの時代に対応し、多くの作業者が関与する試験作業について、デジタルトランスフォーメーション(DX)などによる遠隔化・省人化を志向する。

■デューデリ支援

 これらのモデル事業のほか、造船所などの事業再編に関する計画の策定を支援する事業も実施する見込みだ。

 具体的には、造船所・舶用メーカーなどが実施する資本提携や買収などの事業再編に関し、計画の策定に必要なデューデリジェンス(資産査定)などに対して支援を行い、再編のハードルを低減することを検討する。

 造船所と舶用メーカーの連携による生産効率化を支援する取り組みは、日本では歴史が長い。

 造船所と舶用メーカー間の仕様書交換の電子化を支援する「造舶ウェブ」が実用化されたのは01年度だ。

 しかし当時の技術では、見積もり・発注・図面承認といった手続きをウェブ上で行うことはできても、設計や生産工程全体の効率化には踏み込めなかった。

 それから20年。デジタル技術が飛躍的に向上した今、国交省海事局は造船のSC全体の効率化を実現できるとみて、その取り組みに再び本腰を入れる。