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 印刷 2020年09月16日デイリー版4面

記者の視点/鈴木一克】内航船員の働き方改革実現へ、関係者の「意識改革」進める政策を

 JR東日本がこのほど、来春のダイヤ改正に合わせ、首都圏の路線の終電を前倒しする方針を明らかにした。コロナ禍でリモートワークの実施などビジネススタイルが大きく変化。夜に外出する人も減り、深夜時間帯の利用客が大きく減少したことが一因だ。他方で、列車が運行されていない時間帯に行う線路などの保守点検に携わる作業員の労働環境改善も理由に挙げている。同社によれば、この10年間で同社管内の線路保守作業員は約2割減少。今後も作業員減少傾向が続くと指摘し、人材確保に向けた働き方改革は急務。保線作業の時間に余裕を持たせたいとしてこの方針を打ち出した。

  

 働き方改革は内航船員でも進んでいく。8月には国土交通省の交通政策審議会海事分科会船員部会で行われてきた議論が節目を迎えた。

 船員は船で一定期間職住一体で仕事をするといった特殊な働き方をするため、陸上産業とは異なるルールがある。そのため、陸上産業で進めてきた政府の働き方改革はこれまで適用外だった。しかし、若年層の人材を確保しなければ安定的な内航輸送に支障が出るため、国交省は働き方改革に向けた議論に昨年2月から着手した。

 8月に公表した取りまとめ案では、産業医制度を船員向け(50人超の事業者)にも導入するといった船員の健康確保▽労働時間管理の適正化▽女性船員も働きやすい環境整備など多様なな働き方の実現▽防火操練や当直引き継ぎを労働時間内に組み入れるといった労働時間の範囲の明確化―などの方針が示された。

 新人内航船員数は近年、業界自体の育成システム構築などの努力が功を奏し増加傾向で、年間約1000人が就職している。

 一方で、中途退職者も多く、船員不足が課題だ。退職理由としては、高年齢船員が多いため職場になじみづらいことや、休暇が取りづらい、乗船中の業務量が多い点などが挙げられている。

 船員の定着化などを図るためには、働きやすい環境整備が必要不可欠で、国は改革に向けた検討を進めてきた。

  

 今回の方向性は評価できるが、中小企業も多い内航海運できちんと改革を成し遂げることができるかという点が気になる。

 今回の改革はまず内航事業者自身が理解し、実行することが重要だ。取りまとめ案では「船員の労働環境改善や健康確保に向けて自主的に取り組む内航事業者の見える化」などを進める方針が示されている。内航事業者にはこうした取り組みを積極的に推進することを期待する。同時に施策による効果や問題点も明示してほしい。

 他方、改革によるコストの増加やこれまでの慣行を改めなければならない事態が発生することも想定される。基本的にはコスト増などへの理解は船主がオペレーター(運航船社)、オペレーターが荷主などと協議することになる。だが、荷主を頂点とするピラミッド型構造の内航海運業では、実現が難しい面もある。

 国交省は関係者に対する改革への理解醸成を図る取り組みを進める方針も示している。国にはこうした施策を通じて、荷主をはじめとする関係者全体の理解が深まるよう取り組んでほしい。