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 印刷 2020年09月10日デイリー版1面

マースクタンカース運航船、移民27人 1カ月下船できず。各国受け入れ拒否、地中海で救助

「Maersk Etienne」(写真はマースクタンカースのホームページから)
「Maersk Etienne」(写真はマースクタンカースのホームページから)
移民27人には妊婦や子供も含まれている(写真はマースクタンカースのホームページから)
移民27人には妊婦や子供も含まれている(写真はマースクタンカースのホームページから)

 デンマークのプロダクト船社マースクタンカースの運航船が8月上旬に地中海で救助した移民27人が、1カ月以上にわたり下船できない状態が続いている。周辺国が移民の受け入れを拒否しているため、同船はマルタ島沖でやむなく長期停泊を継続中。“シーマンシップ”(船乗り精神)に基づき遭難者を救助する倫理的責任を果たしたにもかかわらず、出口の見えない苦境に追い込まれている。

 「乗組員は立派に仕事をしたが、われわれが救助した人々は見捨てられ、船は活動停止を強いられている。いま必要なのはアクションだ」

 移民の救助にあたった3万6900重量トン型プロダクト兼ケミカル船「Maersk Etienne」(デンマーク籍)のヴォロディミル・イェロシュキン船長はそう語り、各国に迅速な対応を求めている。

 マースクタンカースが保有・運航する同船は8月4日にマルタ当局から要請を受け、小型ボートで漂流していた移民27人を救助。子供1人と妊婦1人が含まれており、乗組員が食料、水、毛布などを提供した。

 国際海運会議所(ICS)などの声明によると、27人はリビアから逃れてきた難民とみられる。各国政府が受け入れに難色を示している現状をイェロシュキン船長は、「当局がわれわれにしていることは本当に恥ずべきことだ」と強く非難している。

 タンカーは定員を超える多人数が長期生活できるように設計されていない。マースクタンカースのトミー・トマセン最高技術責任者は8月19日の声明で「船内の物資は急速に枯渇している。われわれは当局や政府に人道支援を求めており、救助された人々が安全に下船できる解決策を必要としている」と訴えた。

■条約上の義務果たせ

 さらにマースクタンカースは今月6日、「船内の状況がエスカレートし、上陸を求める移民のうち3人が船から海に飛び込んだ」ことを公表。船長と乗組員の迅速な救助作業により、3人は無事に船に戻り、適切なケアを受けた。

 同社は3人の脱出行動について「安全な下船のための解決策を見いだせない当局の失敗により、移民たちが1カ月以上も船上で足止めを強いられていることに起因する」と指摘している。

 ICSと国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国際移住機関(IOM)の3団体は7日に共同声明を発表し、「国際法と海事条約は船舶と沿岸国に対し、遭難した人々を速やかに救助し、安全な場所での下船を保証する明確な義務を課している」ことを強調。

 その上で「『Maersk Etienne』はその責任を果たしたが、いま外交ゲームに巻き込まれている」と各国に早期解決を求めている。

 地中海での救助者の下船が難航する例は今年に入り3件目。5月にコンテナ船「Marina」が救助した移民78人は伊シチリア島で下船するまで6日間かかった。7月には家畜運搬船「Talia」がリビアからの難民52人のケアのために予定航海を4日間中断し、最終的にマルタが下船を許可した。