マリンネット×日本海事新聞ウェビナー 深堀り対談 「苦境に立つ日本造船業界の今を読む」
 印刷 2020年09月03日デイリー版1面

MariTech 海事未来図】ポストLNG燃料、技術開発計画 相次ぐ。水素・アンモニアなど

 環境規制への対応から、船舶でも石油の代替燃料としてLNG(液化天然ガス)の利用が広がり始めた。IMO(国際海事機関)では、国際海運からのGHG(温室効果ガス)総排出量を2050年に08年比で半減させるなどの目標を設定。LNGだけでは対応が難しいとの判断から、海事業界では、燃料としてLNGに続く水素、アンモニアを対象とした技術開発プロジェクトがここにきて相次いでいる。

 日本郵船は1日、川崎重工業、東芝エネルギーシステムズ、日本海事協会(NK)、ENEOSと共に高出力水素燃料電池搭載船の実証実験を開始すると発表した。5社は1日、オンラインで会見。プロジェクトの幹事会社となる日本郵船の中村利グリーンビジネスグループ長は、将来の代替燃料に対する見方について「当面はLNG。その次に何が来るのかは今の時点で一点張りはしていない」ことを紹介した。

 中村氏は、LNG燃料に関して、検討時期は13年から、導入時期が16年から、成長期は20年からそれぞれスタートしたと説明。水素については検討時期が20年代、導入時期は30年代、成長期が40年代となりそうなことを明らかにした。

 5社のプロジェクトでは、24年半ばに出力約500キロワットの水素燃料電池を搭載した150総トンクラスの観光船を建造。横浜港で実証運航を実施する。商業利用可能なサイズの燃料電池搭載船の開発と、水素燃料の供給を伴う実証運航は日本初となる。

 プロジェクトに参加している川重は既に、推進システムで水素は利用しないものの、世界初となる液化水素運搬船の開発を推進。日豪間で実施する水素サプライチェーン構築実証のパイロット船となる1250立方メートル型の「すいそ ふろんてぃあ」が今秋竣工する予定だ。

 水素に関してはこのほか、商船三井、旭タンカーなどが出資する海運のソリューションプロバイダー「e5ラボ」が19年10月に、東京汽船と共にリチウムイオン蓄電池と水素燃料電池を併用した199総トン型電気推進ハーバータグボートのコンセプトデザインを完成させたほか、商船三井とe5ラボはさらに、水素ハイブリッド自動車船を共同検討することを明らかにしている。

 これ以外に海上技術安全研究所と水産研究・教育機構が19年3月、水素燃料電池搭載を想定した包括連携協定を締結。トヨタ自動車の車両向け推進システムを適用した小型のマグロ養殖作業船の実現を目指している。

 ヤンマーグループも今年5月、トヨタ自動車の水素燃料電池自動車「MIRAI」に搭載されている車両用燃料電池ユニットをベースにした舶用水素燃料システムの開発に着手することを発表した。

 アンモニア燃料に関しても国内外で技術開発が進む。

 国内では今年に入り、伊藤忠商事グループ、今治造船、三井E&Sマシナリーなど6社が、共同でアンモニアを主燃料とするGHGゼロ・エミッション船を開発する計画を4月に明らかにした。

 同船には、MANエナジー・ソリューションズが開発中のアンモニア焚(だ)き機関を搭載する。伊藤忠商事が国内外でのパートナーシップ組成を主導し、アンモニア燃料船の保有・運航を目指すほか、伊藤忠エネクスと共同で舶用アンモニア燃料の供給設備を整備し、統合型プロジェクトに発展させる。

 日本郵船、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)、NKも8月、アンモニアを主燃料とする液化アンモニアガス運搬専用船(AFAGC)と、浮体式アンモニア貯蔵再ガス化設備(A-FSRB)を開発することを発表している。