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 印刷 2020年09月02日デイリー版1面

MariTech 海事未来図】日本郵船、「水素で海を変える」。高出力燃料電池船、川重などと実証実験

高出力燃料電池を搭載した中型観光船(イメージ図)
高出力燃料電池を搭載した中型観光船(イメージ図)

 日本郵船は1日、川崎重工業や東芝エネルギーシステムズなどと共同で、高出力水素燃料電池搭載船の実証実験を開始すると発表した。2024年半ばに出力約500キロワットの水素燃料電池を搭載した中型観光船を竣工させ、横浜港で実証運航を行う。商業利用可能なサイズの燃料電池搭載船の開発と、水素燃料の供給を伴う実証運航は日本初の試みになる。同プロジェクトを統括する日本郵船の中村利グリーンビジネスグループ長は「水素で海を変える」と水素社会の実現に貢献していく意気込みを示した。

 今回の実証事業に参加する日本郵船、川崎重工、東芝エネルギーシステムズ、ENEOS、日本海事協会(NK)の代表者が1日にオンライン記者会見を開き、事業の概要などを説明した。

 実証事業の期間は25年2月末までの5年間。150総トンクラスの中型観光船(内航船)を対象に、高出力の舶用燃料電池システムの開発と水素燃料の供給システムの構築を目指す。

 具体的には、今月から燃料電池搭載船と水素の燃料供給に関するフィージビリティースタディー(実現可能性調査)を開始する。21年からは本船と燃料供給設備の設計に着手する。

 23年から建造・製作を開始し、24年から横浜港沿岸で実証運航を開始する予定だ。実証運航は日本郵船グループで曳船事業を手掛ける新日本海洋社(横浜市)が協力する。

 実証船は商業化への汎用(はんよう)性や開発コスト、技術的観点などから、旅客定員100人程度の中型観光船を選定。全長約25メートル、幅約8メートルで、燃料電池の出力は約500キロワット相当。燃料は液化水素を視野に検討している。日本郵船が建造契約を結ぶ予定だが、建造ヤードは未定。

 水素は使用時にCO2(二酸化炭素)を排出しない究極のクリーンエネルギーとして、発電や運輸系の燃料などとして期待が高まっている。舶用分野でもゼロエミッション船を実現する次世代燃料の一つと目されている。

 日本国内でも既に、20総トン未満の小型の燃料電池船の開発が進められている。今後はさらに高出力の燃料電池を搭載した船舶の開発が求められている。

 中村氏は水素燃料電池船の実用化時期について、「20年代後半になるのではないか」と見通した上で、「500総トン未満の内航貨物船で採用される可能性がある」と述べた。

 499総トンクラスまでの内航船が全て燃料電池船に切り替わった場合の試算も公表。水素の消費量は年約40万トンとなり、年約500万トンのCO2排出削減効果が見込まれるとした。

 日本郵船は高出力燃料電池船の実用化などを通じて、水素の製造・輸送・配送というサプライチェーン全般に関与していく方針だ。