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 印刷 2020年08月24日デイリー版1面

MariTech 海事未来図】日本郵船、比国に機関監視センター。AIも活用、船管デジタル化加速

RDCでのモニタリングの様子
RDCでのモニタリングの様子

 日本郵船は21日、フィリピンに運航船の機関プラントを24時間モニタリングできる「リモートダイグノスティックセンター」(RDC)を開設したと発表した。船舶データ収集装置「SIMS」搭載の約200隻の機関プラントの状態について、AI(人工知能)と機関士らが集中監視する。異常を検知した場合、船舶管理会社を通じて本船に知らせ、改善を促す。船舶管理の一層のデジタル化により、航行安全に加え、燃料消費量の削減、人材育成や自律運航の技術向上などにも寄与する。

 RDCは郵船グループの船員配乗を担うNYKフィル・シップマネジメント(マニラ)のトレーニングセンター内に置く。

 SIMS搭載の約200隻の機関プラントの状態をAIが常時監視する。監視対象となる機関系のデータは約150点。

 AIはエンジン出力やシリンダーオイル消費量、排ガス温度などの機関データをリアルタイムで把握し、グラフなどで可視化する。異常の兆しが視覚的に分かる仕組みだ。

 NYKフィルの機関士もモニタリングに当たる。機関士らはAIが検知した運航船の機関のリスクの正誤を分析する。

 また、検知結果の重要度を高・中・低の3段階で評価。修理が必要な高いレベルのリスクと判断した場合には、異常の原因を推定するとともに、船舶管理会社に伝え、対応を指示する。こうした専門知識を持つ機関士などのエキスパートがAIの検知結果を補完・見極め、現場にフィードバックし、改善を図ることを「エキスパート・イン・ザ・ループ」と呼ぶ。

 機関士らは2等機関士以上の資格保持者で、2、3人で監視に当たる。そうした人材は計10人ほどいるという。

 「AIによる検知結果を、ストレートに本船に投げても現場では抵抗があるかもしれない。やはり人による説明、翻訳が大事。機関士がオペレーションに加わることで、検知結果のブラックボックス化を防ぐことができる」

 山田省吾ビッグデータ活用チーム長はこう語る。

 RDCでの機関モニタリングにより、航行安全に加え、事故リスクの早期発見による修理時間の短縮化やCBM(状態監視保全)を実現し、燃費節減にもつながる。

 また、抽出した異常の種類や傾向のデータは人材育成にも活用できる。

 機関系の制御判断などは、自律運航の技術向上にも役立つ。

 郵船は2008年からSIMSを一部の運航船に搭載し、運航・機関データを収集。「LiVE for Shipmanager」というアプリケーションを介し、収集データの可視化、陸上でのモニタリングを可能とした。

 その後も機関プラントの異常検知システムの構築や、その正確性を確認するデータクオリティーマネジメントシステム(DQMS)の研究開発に注力。これらの実用化のめどが立ったことから、RDCの立ち上げに至った。

 山田氏はSIMSをはじめとする一連の技術開発について「実際に現場を肌感覚で分かっている者たちがつくったものだ」とし、その品質に自信を見せる。

 その上で、RDCの運用について「海技者と陸上の従業員が一体となって取り組み、『世界の物流を途切れさせない』という目標を達成する」と意気込みを語った。