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 印刷 2020年08月14日デイリー版1面

本格始動 各社の未来図―無人運航船プロジェクト】三菱造船、実船活用でシステム開発加速

「MEGURI2040」
「MEGURI2040」
「スーパー・ブリッジX」を搭載している大島造船所の完全バッテリー駆動船「e―Oshima」
「スーパー・ブリッジX」を搭載している大島造船所の完全バッテリー駆動船「e―Oshima」

 三菱造船(2018年に三菱重工業から分社)では1990年代から、業界の技術開発プロジェクトに参画し、航海や荷役の支援など船舶の自動化システムの構築に取り組んできた。この成果として内航船向けに航海支援システム「スーパー・ブリッジX」、荷役自動化システム「スーパー・カーゴX」を製作・販売している。現在、製作・販売はMHIマリンエンジニアリングが担当する。

・電子海図を表示

・トラッキングも

・定時へ船速制御

 「スーパー・ブリッジX」は、電子海図表示機能を装備。電子海図上で航路計画の作成や修正などができるほか、オートパイロットと連携して設定航路に沿った進路制御(トラッキング操船)や、主機制御装置と連動して目的地に定時に到着するような船速制御などを行う。

 ARPA(衝突予防援助装置)やAIS(船舶自動識別装置)の情報を電子海図上に重畳表示できるとともに、衝突危険時の音声警報発令や衝突危険船および浅瀬を避航する航路の提示なども可能。音声操船の実現、音声での問い合わせに音声で対応するなど利便性を高めた。これまでに70隻超で採用されている。

 「スーパー・ブリッジX」は、大島造船所が建造した国内初となる自動操船が可能な340総トン型の完全バッテリー駆動船でも利用されている。同船は、大島造船所の大島工場(長崎県西海市)で行われる進水式などへの参加者の送迎などを行い、運用時のノウハウを検証。操船は基本的に有人で実施するものの、今後は完全な自動運航を目指している。

 日本財団は6月12日、「無人運航船の実証実験にかかる技術開発共同プログラム」を発表した。大型船を使った輻輳(ふくそう)海域での長距離航行による離着岸を含む無人運航船の実証実験として世界初となる。

 使用する船種やテーマごとに5つのコンソーシアム(プロジェクト)を形成して実施する。いずれも内航航路で21年度末までに実証実験を行い、25年までの実用化を目指す。

 このうち、三菱造船は、「スマートフェリーの開発」プロジェクトに新日本海フェリーとコンソーシアムを組んで参画する。大型旅客フェリーの実航海で、無人運航を実証するほか、将来の機関部故障予知実現に向けた監視強化の効果を確認する。

・自動化システム

・機関室監視強化

・陸上からの支援

 具体的には、操船の自動化システムの開発、機関室の監視強化、陸上からの監視・運航支援-の3点に注力する。操船の自動化システムについては、「スーパー・ブリッジX」をベースに自動操船システムのプラットフォームを開発する。これに、新たなアプリケーションをインテグレートして、無人運航を実現する。

 このほか、機関室の監視強化に関しては、機関室内の機器のトラブル発生前に予兆を検知し、寄港中に対策を実施することで、航海中の故障ゼロを目指す。

 既存の監視システムを陸からも利用できるようにするほか、強化する監視場所の設定などを行う。陸上からの監視・運航支援では、新規にサイバーセキュリティーなどにも取り組む。

 開発では、三菱造船が他社などへの委託、取りまとめを担う、委託先は2大学、7-8社など。新日本海フェリーは実証実験での運航のほか、自動化システムの要件、スペックなどに関する助言なども行う。

 実験で利用するのは新日本海フェリーが三菱造船に発注した1万5400総トン級の旅客フェリー2隻の内の2番船。三菱重工の長崎造船所本工場(立神、長崎市)で建造し、21年6月末までに引き渡す。竣工後から22年5月までに複数回の実験を行う。

 今回の日本財団のプロジェクトでは、既存船を利用するケースが多い中、先進的な取り組みに積極的な新日本海フェリーの理解を得て新造船を利用する。就航船の場合、実験の準備のために通常の業務を止める必要があるが、新造船は建造中に準備できるので運航者の負担も軽減される。

 「昨今、自律・自動運航などが話題になっている。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などを活用し、これまでの財産プラスアルファで当社も何かできないか考えた。そのタイミングで日本財団のプロジェクトが出てきた」

 三菱造船マリンエンジニアリングセンター船舶技術部技術開発課機器開発チームの森英男主席技師は、今回のプロジェクトに参加したきっかけをこう語る。「運航支援システムの開発は当社の取り組みとしてできるが、今回のように実船を使った実証実験まで行うプロジェクトを一造船会社の発案で立ち上げるのは難しい」と、同プロジェクトに期待を寄せる。

 プロジェクトでの成果を踏まえ、新製品開発・サービスの拡充につなげるほか、法整備などを含むルールづくりや社会的な認知、関連するアプリケーションの開発促進など波及効果も見込む。(随時掲載)