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 印刷 2020年08月03日デイリー版2面

国内船主の今】(227):コーポレートで吸収せよ。JPモルガン、投資F登場か

 「ここに来てがぜん、仕事が忙しくなってきた」

 7月最終週、商社マンが久しぶりのミーティングで快活に答えた。

■船舶部の多忙

 新規案件の低迷、用船料の減額、新型コロナウイルスの感染拡大―。

 明るい材料がない中でなぜ、今、商社船舶部の営業マンが飛び回っているのか。

 商社マンが続ける。

 「邦船オペレーター(運航船社)を中心に定期用船を延長しないケースが増えている。船主に返船された船舶は、新たに再用船先を確保するか、売船するしかない。全て前向きとは言えないが、仲介案件を中心に仕事が増えていることは確かだ」(船舶部)

 実際、中古船市場ではオペや船主からの「売り」注文が急増している。英クラークソン統計は7月17日号のリポートで、8万2000重量トン型(船齢5年)の売船価格が2250万ドル、6万3000重量トン型(新造リセール=転売)が同2700万ドル、いずれも「ステディー=堅調」と分析する。

 海運ブローカーが話す。

 「ドライ市況の変動サイクルが非常に短期化していることで、市場では買い手と売り手の思惑が交錯しやすくなっている。売り手の船主サイドは『今が売り時』と見ており、買い手のギリシャ船主や欧州勢は『安い買い物』と見ている。売買が成立しやすい環境だ」

 国内船主には苦しい台所事情もある。海外オペからの用船料の減額で、売れる資産があれば今のうちに売ってキャッシュを確保したい。中古船売買で唯一の課題は、新型コロナの影響で双方が検船に立ち会えず、さらに船員交代が難しい点にある。

■資産売却が増加

 「海運不況になると、投資ファンドが市場で存在感を出してくるのが常だ」

 地銀関係者が足元の海運業界を見渡しながら、冷静に分析する。

 LNG(液化天然ガス)船では、既に米金融大手JPモルガンが投資を開始、過去にも米国や欧州拠点の投資金融がバルカーを購入するケースがあった。

 今回も投資金融が、市場で「行き場を失ったバルカー」などへ投資するケースが複数出てくるのだろうか。

 前述の地銀関係者が話す。

 「足元の状況は、昨年から継続している海運不況に新型コロナウイルスが追い打ちをかけた形だ。新造船の発注残が少ないことは、造船所の手持ち工事量が2年を切っていることからも分かる。それにしても、顕著なのは海外オペの用船料の減額要請の多さ。金融機関の対応次第では、『行き場を失ったバルカー』が投資金融に買われるかもしれない」(船舶融資担当者)

 地銀関係者が指摘するのは、海外オペの減額要請に対し、金融機関に温度差が生じている点にある。

 従来、地銀は海外オペによる日本船主への減額要請に対し、「リスケ(返済計画の見直し)に応じるしかない」として、船主に理解を示すケースが大半だった。

 しかし、今回は足元で金融庁が地銀の経営内容を厳しく監視していることもあり、「船主さんのコーポレート(与信)で吸収するべきだ」という意見が出ているのだ。

 船主関係者が話す。

 「コーポレートで吸収する、ということは船主が自分の資産や貯金を取り崩して減額分を補填(ほてん)せよ、ということ。金融機関としては当然の言い分かもしれないが、全ての船主がコーポレートで吸収できるわけではない」(今治船主)

 メガバンクを含め金融機関は船舶への抵当権を実行する気配はない。

 しかし、コーポレートで吸収できなければ、船主に対し「資産=船舶」を売却して返済に充てるよう指示する可能性はある。実質的にこのような銀行管理の船主が増えるのではないか、という予想がここに来て増加していることも事実だ。

(国内船主取材班)

=毎週月曜掲載