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 印刷 2020年07月31日デイリー版1面

本格始動 各社の未来図―無人運航船プロジェクト】丸紅、事業ありき 未来広げる

中村室長
中村室長
実証実験に使う「シーフレンドZero」
実証実験に使う「シーフレンドZero」

 丸紅はトライアングル、三井E&S造船、神奈川県横須賀市とコンソーシアムを組み、その代表として日本財団が支援する無人運航船の技術開発プロジェクトに商社で唯一参画した。自律運航技術の実証実験に国内外のプレーヤーが先を争って乗り出す中、早期の事業化を意識した「ビジネスモデルありき」で実験を進められることが、総合商社の強みと見ているからだ。先行事例をつくり出し、将来の商機を広げるとともに、同技術の社会実装に貢献することを目指す。

■全航行を自動化

■JRCSも参画

■商社が道ひらく

 「既存の小型船を手軽に無人化する実証実験」-。丸紅船舶プロジェクト推進室の中村高志室長は、プロジェクトの目指す姿をこう簡潔に表現する。

 丸紅など4者の実証実験では、横須賀市の三笠桟橋と猿島間でトライアングルが運航する小型旅客船「シーフレンドZero」(19総トン)に、三井E&S造船が開発中の自律制御モジュールなどの自律操船技術を適用。離着桟を含めた航行の全ての操船の自動化を目指す。

 2021年末までに無人運航対応機器の設置など同船の改造や、自律操船技術の検証、調整などを実施。その上で22年3月末までに、自律操船による航行の実証実験を行う計画だ。

 また4者に加えて、船舶用配電機器の製造・販売などを手掛けるJRCSも、新サービスとなる画像解析で今回のプロジェクトに参画することが決まった。

 JRCSが開発する航海中に障害物などを検知する画像解析用カメラを「シーフレンドZero」に搭載し、画像データの蓄積・解析を7月からスタート。同データを信号化し三井E&S造船の自律操船システムに送信することで、センサーに加えてモニターでも障害物を検知する仕組みを構築する。

 丸紅はプロジェクトの進捗(しんちょく)管理や課題の抽出など、コンソーシアムの取りまとめ役を担う。

 日本財団の無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」に採択された5コンソーシアムのうち、丸紅などが特にユニークなのは、「小型の船舶を使ったビジネスモデルありきの実証実験を行える」(中村氏)点だ。

 丸紅は19年4月、船舶関連の新規事業開拓などを手掛ける「船舶プロジェクト推進室」を発足。以来、当初からその柱の一つになると見ていた無人運航船の分野で、スタートアップ企業を含む国内外のプレーヤーと対話を重ねてきた。

 その過程で「無人運航では技術に関する議論は多いが、ビジネスモデルまで踏み込んだものが少なく、事業化への道筋が見えずに苦慮している」との声を多く聞いた。

 こうした経緯から、無人運航船の持続可能なビジネスモデルを具体的に構築し、「まず日本で事業化の道を開くのがわれわれ商社の役割」(同)との結論に至った。

 丸紅などのコンソーシアムは、技術を自社で使う前提で囲い込んで実証するオペレーター(運航船社)とは立ち位置が異なり、プロジェクトのテーマに社会課題の解決を掲げている点も特徴だ。具体的には、無人運航船を船員不足や離島航路の問題、災害発生時の輸送手段確保などの解決策として位置付けている。

■小型船の波及力

■全国・世界展開

■社会認知広める

 実証実験の対象に小型旅客船を選んだのは、「広く小型船に搭載可能な無人運航システムが確立されれば、波及効果が大きい」(同)と見ているからだ。

 小型船の無人運航は、一般的にスタンスラスター(船を横方向に動かすための動力装置)を装備していないことから横方向に移動する力が小さいなど、技術的なハードルは相対的に高くなる。一方、「シーフレンドZero」の類似船型は、国内でも隻数、事業者数ともにボリュームゾーンだ。

 こうした船型で無人運航を実現できれば、船員の不足・高齢化が課題となっている内航業界の船員の労働負荷軽減や、運航の安全性向上に寄与する。

 また島しょ部や都市圏の水路の渡船、観光船などで、災害発生時の物資輸送を支える技術としても幅広い活用が期待できる。さらにバージ輸送にも展開できれば、トラックドライバー不足や港湾混雑の緩和の一助になる可能性がある。

 丸紅はこうした広がりを視野に、実証実験の終了後は「総合商社として無人運航船の事業化を図り、将来的には全国・世界展開、オンデマンド型の輸送など船舶を活用した新しい生活様式を提案できるところまでを目指す」(同)考えだ。

 そのためにまず、今回のプロジェクトで実証実験を成功させ、「無人運航船に対する認知を社会に広めていくことが何より重要になる」(同)。

 実績を発信できれば、国内外のプレーヤーと具体的な話をする機会が増え、事業化の糸口になると見ているからだ。

 実際に6月の日本財団での記者会見以降、無人運航に関心のあるプレーヤーからアプローチが増えているという。丸紅は「実績を積み重ねて仲間を増やしながら、将来に向けた事業の種をまく」(同)。

(随時掲載)