MariTech Webinar Japan 2020 <日英同時配信>
 印刷 2020年07月31日デイリー版1面

商船三井、ケープ複数隻 新造整備。国内船主から中長期用船。エコ船型「質の成長めざす」

 商船三井は18万-20万重量トン級の鉄鋼原料船ケープサイズバルカー複数隻を新造整備することを決めた。日系造船所で2022年前後に竣工予定の新造船を国内船主から中長期用船する。高齢船のリプレースを念頭に先行整備し、長期貨物契約だけでなく中期契約やCOA(数量輸送契約)、スポット運航も視野に入れる。最新鋭のエコ船型による船隊リニューアルを通じて「規模拡大ではなく、質的成長を目指す」(塩津伸男執行役員)。 

 商船三井と国内船主、造船所が今回のケープサイズ新造整備に合意したのは、コロナ禍が深刻化する前の昨年末ごろとみられる。

 「当社の営業基盤に沿ったリプレースであり、身の丈以上の整備はしない。ケープサイズ船隊のクオリティーの維持向上が目的だ」

 塩津氏は今回の新造整備の主眼についてそう語る。

 その上で、商船三井の鉄鋼原料船部が目指す“質的成長”について「さまざまな要素がある。お客さまの環境負荷低減に資する技術的提案力、ハード&ソフト両面からの船質強化、グローバル営業強化につながる人材育成・組織確立など、クオリティーの底上げを図っていく」と方針を語る。

 ドライ市場では、資源大手が出資する船舶査定企業ライトシップの格付けをはじめ、荷主が求める輸送クオリティーが年々引き上げられている。

 「お客さまの鉄鋼メーカーはグローバルに展開している。当社もグローバル視点で輸送サービスを提供するためには、競争力に優れた新鋭の基幹船隊が欠かせない」(塩津氏)

 商船三井の鉄鋼原料船部は現在、基幹船隊(自社船・中長期用船)としてケープサイズ90隻前後とパナマックス約10隻を合わせた100隻規模を擁する。

 同社はリーマン・ショック以降、市況エクスポージャー(変動にさらされる部分)抑制に向け、かつての計130-140隻規模から基幹船隊を圧縮。短期・スポット用船を活用しながら、マーケット変動への耐性を高めている。

 商船三井はケープサイズ船隊規模の最適化に一定のめどが付いたことから、今回のリプレース整備を決断。当面はケープ90隻前後、パナマックス約10隻の体制を維持していく考え。

 さらに今回の新造整備の背景には、邦船各社が共通課題として抱えるドライ基幹船隊の高齢化もある。

 ケープサイズはリーマン・ショック前後の07-09年に新造船竣工が集中した経緯があり、これから船齢10歳強の高齢船の退役が相次ぐ見通しだ。

 船舶設計技術の進歩を背景に近年、新鋭船と高齢船の燃費性能の差は大きく開いている。特に日系ヤードの新鋭エコシップの評価は高く、用船マーケットでもプレミアム用船料が乗ることが多い。

 ここ数年、邦船各社はアセットライト(資産の軽減)の観点から中長期用船を抑制してきたが、商船三井は日系ヤード建造のエコシップを重視し、「短期、中長期のメリハリを付けながら基幹船隊を適宜更新していく」(同)方針だ。

 【解説】リプレース再開、逆風下の英断

 足元の鉄鋼原料市場は、国内鉄鋼メーカーの高炉休止が相次ぎ、日本向け荷動きに逆風が吹いている。しかし、厳しい環境だからこそ、“選ばれる船社”となるためにハード、ソフト両面でのクオリティー維持向上が不可欠となる。

 今回、商船三井が基幹船隊のリニューアルを目的に中長期用船に踏み切ったことは、日本の船主や造船所にとって朗報といえる。リーマン・ショック前後に竣工した基幹船隊の高齢化を背景に、邦船社がリプレースを再開しつつある象徴的な事例と捉えることができる。

 国内鉄鋼メーカーも国際競争力強化のために、老朽設備の統廃合を断行している。邦船社も荷主に遅れをとらないよう、環境負荷低減や輸送クオリティー向上のための定期的な基幹船隊の更新が商権確保の鍵を握る。

(柏井あづみ)