MariTech Webinar Japan 2020 <日英同時配信>
 印刷 2020年07月30日デイリー版1面

インタビュー 東洋船舶・双日マリン提携】(下):双日マリンアンドエンジニアリング取締役執行役員機器部門長・小西一司氏。「安く建造」から「船の高付加価値化」へ

双日マリンアンドエンジニアリング取締役執行役員機器部門長 小西 一司氏
双日マリンアンドエンジニアリング取締役執行役員機器部門長 小西 一司氏

 --双日マリンアンドエンジニアリングの事業概要を聞きたい。

 「船舶と機器が2本柱で、人員は総勢約120人規模となっている。船舶部門は、親会社双日の前身企業の日商岩井とニチメンのそれぞれの船舶部が源流。新造船契約・関連業務、各種用船の仲介や中古船売買、定期用船仲介など不定期船サービス、船舶保有・管理などを手掛ける。機器部門は日商岩井の造船工業部にルーツがある。舶用機器の販売、エンジニアリングサービスなどを実施している。舶用機器の事業に関しては、年間取扱額が約280億円で、取引先数は販売先、仕入れ先とも50社を超え、年間相当数の契約件数に及ぶ」

■思い合致

 --東洋船舶と提携に至った背景は。

 「どっちからどっちへということではなく、このタイミングで舶用機器ビジネスの成長戦略に関する両社の思いが合致した。昨年から今年にかけて日本の造船大手で大型の工場売却検討や、一部工場での商船建造事業の終了などが発表された。国内造船業がシュリンクする一方、環境問題への対応としてLNG(液化天然ガス)焚(だ)きなど新たな技術を伴う船舶の需要が発生している。その新たな需要を中国、韓国の造船が取り込んでいるが、日本の造船はなかなか成約に至っていない」

 「これにより技術的に日本が中国、韓国に水をあけられていくのではという懸念があった。造船が日本の一つの産業として、危機的状況にきている。われわれも関連する事業をなりわいとしており、何とか変えないといけないと考えた」

 「日本の舶用メーカーは、海外と比べ丁寧に良いものを造るなど秀でたところがある。優れたところをてこにして、造船業、さらには海事産業全体を活性化させる仕組みづくりに取り組むことを考えた」

 「具体的にいつまでに何をするのかについては現在検討中だが、その一つとして個社ではできない技術開発がありそうだ。その旗振り役は、客観的立場に立てる商社が適当。国内船舶商社として船舶の取扱数最大の東洋船舶および三井物産と、多岐にわたる舶用機器の商権を持つ当社の力を組み合わせると、大きな力を発揮できる」

 「今の日本の造船業界では、建造船はバルカーが主流。船価で見ると比較的低く、国際競争によりさらに低くしようとしている。このような構造を改めなければいけないのではないか。安く建造するのではなく、建造する船自体の価値を上げる方向にもっていく必要がある」

■日本版SI

 --提携の目的として日本版のシステムインテグレーター(SI)組成がある。システムインテグレーターはなぜ欧州で目立っているのか。

 「コングスベルグはノルウェー、ABBはスイスが本拠地で舶用機器事業の中心がフィンランド、バルチラもフィンランド、アルファ・ラバルがスウェーデンというように、システムインテグレーターと呼ばれる舶用企業は多くが北欧に所在する。北欧では、客船やオフショア支援船などの造船所はあるものの、一般商船を手掛ける企業はほとんどない」

 「それなのに舶用機器分野では世界をリードしている。研究開発を貪欲にやり、新しい製品・サービスを世に出し、新しいマーケットを創出し、先駆者利益を得ている。技術イノベーションとは、新しいものをつくり、市場を獲得し、高収益を上げ、次の投資に回す。こうあるべきだ」

 「欧州船主は、基本設計を欧州のエンジニアリング企業に依頼し、エンジンなどを含む主要な機器・システムを欧州のシステムインテグレーターに供給してもらい、人件費などが安い中国で臆せず建造している。このような仕組みを、日本版にアレンジして、実現できないか考えてみたい。優秀な日本メーカーの製品をうまくインテグレーションすることで、新たな付加価値を創出できるのではないか」

 「国内の舶用機器メーカーはこれまで、システムインテグレーターとしての機能を持っていた日本の造船大手などが開発した船舶に対し、最適な機器を製造し提供してきた。建造能力を拡大してきた韓国、中国との国際競争激化で、国内造船のシステムインテグレーターとしての機能が低下し、いかに安く建造するかに注力せざるを得なくなった。これにより、優れた舶用機器をどう活用できるか考える役割の企業がいなくなった」

 「船を動かす装置の価値をどう上げるか考えるのが、本来のシステムインテグレーションであるべきだ。欧州の成功事例を見て、エンジニアリング力をうまく使い、技術レベルの高い舶用機器メーカーを巻き込み、日本版のシステムインテグレーターの組成につなげたい」

■環境とデジタル化

 ――実際に手掛けることの一つは技術開発だと思われるが、テーマは。

 「環境とデジタル化。例えばエンジン関連などというように個別でやっていく場合には、優先順位を付ける必要がある。何をどう進めるかは今後検討していく。今対応できるテーマを全て出して、そこから具体化する」

 ――今後のスケジュールはどうなるのか。

 「IMO(国際海事機関)では、国際海運からのGHG(温室効果ガス)に関して、2030年に平均燃費を08年比40%改善、50年にGHG総排出量半減という目標を示した。30年は10年後。まずは、国内造船の手持ち工事がなくなる23年以降に建造する船に適用できる最短な仕組みを目指したい」

■シナジー最大化へ

 ――双日マリンアンドエンジニアリングは、機器(舶用機器)事業を今後どうしていくのか。

 「当社の船舶と機器事業はこれまで独自に動いていた部分があった。現在は『One SOMEC(1つの双日マリンアンドエンジニアリング)』を掲げ、船舶と機器のシナジー(相乗効果)を最大化しようとしている」

 「例えば、船舶事業でのこれまでの主体は外航船だった。内航業界は人材確保などで困難に直面しており、船舶と機器の両事業が持つ財産、人脈、商権などを活用し、内航船分野で新たなビジネスができないか模索している。テーマは電動化船や、荷役などのロボット化などになる」

 (この連載は五味宜範が担当しました)

 こにし・かずし 87(昭和62)年日商岩井機器販売(現双日マリンアンドエンジニアリング)入社。17年から現職。