船員支援キャンペーン第2弾
 印刷 2020年07月22日デイリー版1面

MariTech 海事未来図】商社系2社が提携、日本版SI構築へ。舶用から海事産業活性化

 昨年から今年にかけ、造船大手(総合重工系造船)を中心に工場の売却や商船建造の終了など事業規模を縮小する動きが相次いでいる。このような動きに危機感を共有した三井物産系の東洋船舶、双日子会社の双日マリンアンドエンジニアリングの2社は、会社の枠を超え業務提携に踏み切った。両社は提携を機に舶用機器分野から日本の造船業、さらに海事産業全体の活性化、日本版システム・インテグレーター(SI)の組成を目指す方針だ。

 「これまでも船腹過剰による不況があったが、今回は特に造船分野での状況がこれまでと異なる」

 東洋船舶の田中信之社長は、韓国、中国との国際競争が激化する中、国内造船がこれまでと比べ深刻な状況に置かれている点を強調する。

 自動運航、電動化など新規需要取り込みに必要な技術開発面で、舶用機器メーカーの重要性が増していることに注目。「高い技術力を持つ日本メーカーがたくさんあり、造船業を支援する上で大事な役割を果たす。ここになんらかのサポートができないか考えた」と語る。

 双日マリンアンドエンジニアリングの小西一司取締役執行役員機器部門長も、日本の造船大手の規模縮小と、国内造船が新技術の需要を取り込めていない2点を懸念。「日本の舶用メーカーは、海外と比べ丁寧に良いものを造るなど、海外メーカーと比べ秀でたところがある。ここをてこにして、造船業、さらに海事産業全体を復活させる仕組みづくりに取り組むことを考えた」と話す。

■オープンな環境へ

 提携で具体的に何をするのか。今後詳細を詰めるものの、想定されることの一つは技術開発だ。

 既に業界横断的な動きがあり、船社や造船会社が先導するケースが多いが、今回は第三者的な立場の商社が旗振り役となり技術開発の主体を舶用機器メーカーとすることを想定。中小企業が多い舶用機器メーカーでは、資金・人材面などで単独で実施することが難しい大規模な技術開発を、希望するメーカーがチームを組んで取り組むことにつなげる。大手企業などの囲い込みなどを避け、誰でもフリーに参加できるオープンな環境づくりを目指す。

 技術開発と並行して、欧州で目立ってきたシステム・インテグレーターの日本版の組成も重要なテーマとした。

 船舶のデジタル化が進展し、膨大な機器がネットワーク化すると、機器全体はソフトウエアを介して統合されたシステムとして機能。このシステムを構築できるシステム・インテグレーターが近年注目を浴びている。欧州では、ノルウェーのコングスベルグ、フィンランドのバルチラ、スイスに本拠地を置き舶用機器事業はフィンランドが中心のABBなどがこれに該当する。

 自動運航船や最新の環境規制に対応する電動化船などの船型開発、基本設計、機器の開発と調達などまで手掛ける。

 例えば、欧州船主は、基本設計をエンジニアリング会社に依頼し、主要な機器類などをシステム・インテグレーターに供給してもらい、人件費の安い中国で建造することなども行っている。

 これまで国内の舶用機器メーカーは、システム・インテグレーターの機能を有した造船会社の下にぶら下がる格好で、造船会社の開発した船型に沿った製品を供給してきた。一方、国内造船は近年、韓国、中国との競争で、いかにコストを下げて建造するかという点に注力せざるを得ず、優秀な舶用機器を活用して船の価値を上げるというような本来のシステム・インテグレーターの機能が低下している。

 小西氏は、「安く建造するのではなく、船自体の価値を上げる方向にもっていく必要がある」点を指摘する。

 両社は日本版のシステム・インテグレーター組成で、付加価値の高い船舶を日本で建造することを目指す。田中氏は「海事産業のプレーヤーの一つにシステム・インテグレーターがなることは十分にあり得る」とし、その組成支援のほか、「当社自体がシステム・インテグレーターに参画する機会があれば検討したい」と語る。