船員支援キャンペーン第2弾
 印刷 2020年07月15日デイリー版4面

記者の視点/岬洋平】DX進展・構造化、コロナ禍で不可逆…業務見直し契機に

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、さまざまな業界が需要低迷による苦境に陥っている。コロナ禍の中、数少ないプラス効果があるとすれば、デジタル化の進展だろう。

 荷主側はこれまで訪問回数を「誠意」と見なすようなところがあったが、昨今はむしろ「実際の訪問にはあたわず」という対応が主流。オンラインにより、地域・部署を超えた会議開催のハードルが下がり、効率的な商談が進むようになったという声を聞く。MSCジャパンの甲斐督英社長によるとオンライン会議の活用により、「営業担当者の顧客訪問件数は(コロナ禍以前の)2件から4件に増えた」という。顧客との接点も拡大している。

 デジタル対応が難しいとされてきた新規営業でも、「ウェブ経由の引き合いに全てオンラインで対応し、受注につながった」(中堅フォワーダー)といった実例も出てきている。これまでとは違ったプレゼンスキルが求められるなど変化への対応は必要だが、コロナ禍が収束したとしてもデジタル化の進展は不可逆の動きだろう。

 先日、シップデータセンター(ShipDC)のオンライン総会で、海運・造船業界のデジタル化などについて議論する「海運ニューノーマル」と題するパネルディスカッションのファシリテーター(進行役)を務めさせていただいた。普段取材するロジスティクス関連とはまた違った分野の識者の意見をうかがい、非常に多くの刺激を受けた。

 大テーマの一つが「デジタルトランスフォーメーション」(DX)。一般メディアを見ても、猫もしゃくしもDXとばかりにヘッドラインを飾る言葉だが、個別各社が具体的に何をすべきか、と考えると意外と分かりづらい。特に海運・造船、物流、いずれも「現場」が存在し、業務の全てをデジタル化することは不可能だ。だからと言って「うちはデジタルと無縁」と言い切れる企業はないだろう。

 パネリストのアルファボートの西谷大蔵社長(日本海事新聞社社外取締役)はDX推進に際して、「構造化」の重要性を指摘した。詳細は後日の紙面で紹介するが、すし職人を例に引き、「すし」を作り上げる技術の構成要素は何か、それは本当に何十年もの修業によってのみ成立するものなのか、場合によっては数カ月の「すし職人学校」の修業でも、到達できる技能もあるのではないか、その在り方を解きほぐすことで「すしを握る」という業務の構造を浮かび上がらせる。

 記者の書き方がつたなく伝わりにくければ恐縮だが、職人的に、もしくはハイコンテキスト(文脈依存)で受け継がれてきた業務も、実際には個々の工程がある。それらを構造化・標準化することで、デジタルに乗せる基盤が出来上がる、ということだ。

 日本企業には職人気質を貴ぶ風土が多分にあり、こういった議論を受け入れたくないという心理的抵抗もあるだろう。しかし、業務の分析・構造化はBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)そのものとも言える。冒頭のオンライン営業拡大も「営業とは何か」を突き詰めた結果だろう。

 人手不足もあり、業務の効率化、スムーズな継承は、事業継続・収益拡大のために避けられない問題だ。伝統的な職業ほど、「小難しい話」と逃げずにDXに取り組む必要がある。