船員支援キャンペーン第2弾
 印刷 2020年07月14日デイリー版2面

新役員の横顔】川崎汽船執行役員(船舶部門担当補佐、安全品質管理グループ長委嘱)藤丸明寛氏、デジタル化見据え、船上の働き方改革

川崎汽船執行役員(船舶部門担当補佐、安全品質管理グループ長委嘱)藤丸明寛氏
川崎汽船執行役員(船舶部門担当補佐、安全品質管理グループ長委嘱)藤丸明寛氏

 就任の抱負 運航船の安全管理の高度化と輸送品質の向上に向けて、貪欲に取り組んでいきたい。現場の重要性は身をもって体験している。実際に船をケアしている船主や船舶管理会社の声に耳を傾け、できるだけ水際に近い立場で物事を考えるようにしたい。

 営業部門とのコミュニケーションも重視する。お客さまから日々、要望や苦情を聞いているのは営業部門になる。現場の声とお客さまの声の双方に耳を傾け、安全と品質のさらなる向上を目指す。

 担当分野の課題 短期的には新型コロナウイルス対応に尽きる。今年2月以降、感染拡大を防止するために渡航制限が強化されたため、船員交代がほとんどできていない。

 当社管理船では1隻当たり毎月平均3-4人の船員が交代する。全体では毎月500-600人が交代する。交代が4カ月滞ったため、当初の下船予定時期を超過して乗船している船員は2000-2500人に膨らんでいる。その中でも約800人の船員が10カ月を過ぎた長期乗船を強いられている。

 乗船期間が長期化すれば、精神的にも肉体的にも疲労がたまる。それは安全や品質にとって良い方向には働かない。船員が円滑に交代できないことは、安全に直結する深刻な問題だ。

 乗組員交代時の感染リスクを制御し安全を担保しながら、2000人以上の船員を交代するには時間がかかる。船員交代の正常化には今年いっぱいかかるだろう。

 中長期的な課題は、船内でも外部からの要求が増える中で、いかに業務の効率化を図り、乗組員が安全運航・品質向上に集中できる環境を整えられるかということになる。

 昨今海運界でも、デジタル技術やAI(人工知能)など先進技術の研究開発が進む。それらを導入するための手前作業として、昨年8月に船上の働き方改革に関するタスクフォースを立ち上げた。

 船上には必要最小限の人数しか乗船していない。業務の革新的な効率化を創出する新技術も、その導入過程では相当な時間と新たな負荷が発生する。まずは働き方改革で船内に余裕をつくり、新しい取り組みを十分受け入れられる環境を創出することが狙いだ。

 船員を志した理由 高校3年の時の英語の先生が、授業中に外航船の船員をしている友人の話をしてくれた。その時に船員という職業があることを知った。授業が終わってから職員室を訪問し、船員になるにはどうすればいいのか質問したところ、商船大学を紹介された。

 先生には船乗りになったら結婚できない、親の死に目にも会えないと、進路を変更するように説得された。だが、船員への憧れは変わらなかった。船員にひかれたのは、人と違った仕事をしたいという思いがあったからかもしれない。当社に入社したのは、たまたま縁があったということだと思う。

 印象に残っている仕事 約30年間の社会人生活のうち、海上と陸上でほぼ半々の15年間ずつ働いた。船上の仕事はLNG(液化天然ガス)船やLPG(液化石油ガス)船など液化ガス船が多かった。最初のデビュー船から最後に乗船した船まで、驚くほどよく覚えている。それほど刺激の多い仕事ばかりだった。

 陸上の仕事では、米ロサンゼルスに4年間駐在したことが印象に残っている。ちょうど2001年9月11日に同時多発テロが発生した時期に当たる。ISPSコード(船舶と港湾施設の保安のための国際コード)が制定される契機となった事件だが、多くの人が街中を「USA、USA」と叫び行進していくさまを見て、世界が変わる大きな節目を目の当たりにしたように感じた。

 座右の銘 仕事をする上で心掛けていることは、全ては人次第ということ。人間は一人一人計り知れない潜在能力を持っている。人が集まり、目線を合わせれば、大きな仕事ができる。船上では乗組員全員が同じ方向を向かないとオペレーションはうまくいかない。

 今は在宅勤務があり、全員で顔を合わせることが少なくなったが、しっかりと皆で目標を定め進めていくことが重要だと思っている。これからも人を大切にして、皆の心が同じ方向を向けるような雰囲気づくりを大事にしたい。(編集部・山田智史)

 ふじまる・あきひろ 89(平成元)年東京商船大(現東京海洋大)卒、川崎汽船入社。01年Kラインアメリカ・ロサンゼルス駐在船長、07年ケイラインシップマネージメント(現ケイラインエナジーシップマネージメント)出向、16年海事人材グループ長、20年4月から現職。宮崎県出身、54歳。