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 印刷 2020年06月30日デイリー版1面

豪州、連続乗船14カ月までに。長期乗船増、各国PSC波及も

 豪州海洋安全局(AMSA)は、3月以降PSC(ポートステートコントロール、寄港国検査)の確認事項から除外してきた船員の連続乗船期間を再び検査対象とする。7月から14カ月を超える船員を乗船させている船舶は、豪州入港時のPSCで拘留される可能性がある。新型コロナウイルスの感染拡大で船員交代が停滞し長期乗船者が増える中、AMSAは船員の健康確保を重視し、航行安全を担保する方針に転換した。PSCに厳格なAMSAが乗船期間を再び確認し始めることで、各国のPSCにも同様の動きが波及する可能性がある。

 AMSAは26日、7月からPSCで再び連続乗船期間を確認する方針を発表した。

 AMSAは「(3月以降の)連続乗船規定の緩和は国際貿易のサポートに不可欠だった。だが、船員の福祉を考えると無期限に認めるわけにはいかない」としている。

 7-10月までの間、豪州入港時に求められる乗船可能期間については最長で14カ月と規定。ただ、13カ月以上の連続乗船の場合、旗国(フラッグ)が承認した船員の本国送還計画の提出が必要。提出されない場合は本船の出港を禁止するという。

 また、11カ月以上13カ月未満の連続乗船で休暇の取得が認められなかった場合も、旗国承認の本国送還計画の提出が求められる。

 同計画への旗国の承認が間に合わない可能性も踏まえ、海運会社の中には「当社では実質的に連続乗船の上限は13カ月と認識している」との声もある。

 PSCで拘留されれば、その間、オフハイヤー(不稼働による用船契約の中断)になる可能性もある。長期乗船者のいる船舶は豪州入港前に船員交代を済ませておく必要がある。

 ある邦船社はAMSAの今回の決定を受け、急きょ、豪州入港を控えるケープサイズバルカーについて、ベトナムで同国人船員の交代を行うことにしたという。

 「デビエーション(航路離脱)もし、運航時間のロスや入港税も発生するが、長期乗船者がいるため、対応するしかなかった」同社関係者はこう語る。

 AMSAが今回、連続乗船期間を再び見るのは、コロナ禍で船員交代が長らく停滞し、1年以上などの長期乗船者が出始めていることに留意したため。船員の健康が危ぶまれれば、航行安全にも支障が生じ得る。

 3月時点でAMSAはMLC2006(海上労働条約)で定められている乗船期間の上限を緩和する方針を発表した。

 MLC2006では船員の連続乗船可能な期間について最長12カ月と規定。ただし、休暇の1カ月をどう扱うかで実際の乗船可能期間は11-13カ月と幅があり、批准国によって運用が異なる。

 豪州は11カ月と短い方を採用していたが、3月以降は11カ月を超えて乗船させている場合でもPSCで検査しない方針としていた。

 3月に連続乗船規定を緩和したのは、中国で新型コロナが確認されて2カ月程度が経過し、アジア圏でのフライトが停滞し始めた時期。船員の手配が難航し始め、円滑な交代が難しくなり始めた頃だった。

 船主や船舶管理会社が交代に手間取る中、緊急的な救済策として連続乗船規定を撤廃した。

 だが、6月に入っても依然として収束せず、長期乗船者も発生し始めていることから、今回、改めて上限を設けることにしたようだ。

 PSCに厳格なAMSAが連続乗船規定を再び設けることで、各国のPSCにも波及する可能性がある。3月に同規定を緩和した後、世界的に同様の動きが広がった経緯がある。

■業界内で批判続出

 一方、船主関係者は今回のAMSAの連続乗船規定の復活について「シンガポールや香港、欧米でも徐々に船員交代ができるようになってきている。だが、豪州はそうした船員交代地としての緩和は一切せず、むしろPSCを強化している。とても船主側のことを考えた措置とは言えない」と批判。

 船舶管理関係者も、「豪州国内は船員ら外国人の州をまたぐ移動ができない。そういう規制緩和を先にやるべきではないのか」と憤りの声を上げた。