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 印刷 2020年06月30日デイリー版4面

記者の視点/船木正尋】トラック運転手の人手不足解消。取引環境改善と物流DX検討を

 自民党の外国人労働者等特別委員会は6月17日、昨年4月に新設された外国人労働者の在留資格「特定技能」の追加を念頭に、トラック運転手を「技能実習」の対象にするよう求める提言を取りまとめた。来年度の予算案の編成に向けた政府の「骨太の方針」に盛り込むよう働き掛ける。ただ、当のトラック業界では外国人を活用するとの方針について賛否があるようで、導入を慎重に検討する必要がある。

 トラック運転手はきつい仕事、長い拘束時間、低い給与水準などの理由でなり手が少なく、高齢化が進んでいる。

 鉄道貨物協会の調べによると、2028年度にはトラック運転の不足数が約28万人まで拡大する見通し。トラック業界は中小企業が全体の9割超を占め、経営も厳しい。4月の有効求人倍率は2・34倍と全業種平均の1・32倍を大きく上回る。

 日本経済を支える重要な産業である物流の先行きに赤信号がともる。

 昨年スタートした「特定技能」では当初、人手不足解消のためトラック運転手を盛り込もうとの動きもあったが、所管する厚生労働省から「運転は特殊技能ではない」との理由で指定されなかった。

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 こうした中、6月11日の同委員会の会合で全日本トラック協会は「日本のトラック運送業は車両点検、庫内業務、荷主先での検品、積み降ろしなど多様な作業が行われ、専門性が高い」と説明し、道路貨物運送業務として技能実習2号移行対象職種への追加を求めた。

 ただ、トラック業界も外国人労働者の導入で意見が一致しているわけではないようだ。関係者は「新型コロナウイルスの影響でトラック運転手の有効求人倍率が下がっており、まずは日本人の職を確保しなければならない。さらに『新標準運賃約款』が告示され、適正な運賃と料金を求められるようになったが、まだ外国人を雇用する土壌はできていない」と話す。

 適正な運賃・料金を収受できる取引環境を整備するため「新標準運賃約款」が告示されたが、新約款に移行しても実際に適正な運賃・料金が支払われないケースもあると聞く。

 まずはトラック事業者と荷主の対等な関係を築くようにしなければならない。

 さらに、労働力不足を解消するため、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などを活用したロボティクス技術の活用も視野に入れるべきだ。倉庫や輸配送の物流作業で自動化が進展。海外では、少人数の設備メンテナンス要員以外は完全無人の物流センターの構築や、自動運転技術を活用した配送サービスの実証実験が行われている。

 今後もモノの流れに関連する作業の無人化対象領域は広がっていく。

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 一方、日本では6月22日の経済財政諮問会議で「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2020」の骨子案が示され、デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進を打ち出した。物流の面でもDXは不可欠だ。

 この新たな取り組みの事例としては、トヨタ自動車が静岡県裾野市に自動運転やAIの実証都市を建設する計画に関連して裾野市が発表した「スソノ・デジタル・クリエイティブ・シティ(SDCC)構想」がある。この構想には自動運転などの輸送サービスの充実、AIを活用した物流改革が盛り込まれている。

 トラック運転手への外国人活用を議論するよりも、まずはトラック事業者の取引環境の改善に加え、デジタル技術を活用した物流のDXについて検討するべきではないだろうか。