船員支援キャンペーン第2弾
 印刷 2020年06月29日デイリー版4面

記者の視点/五味宜範】「未来の足音」無人運航計画、大規模プロジェクト 世界にPR

 新型コロナウイルスの影響で少なくなっていた記者会見が徐々に復活してきた。日本造船工業会の会見は、これまで造工の事務所内にあった広めの会議室を使用してきたが、17日は霞が関ビル内の東海大学校友会館で行われた。3人掛けの机が並ぶ会場では、1列目が左端だけ、2列目は右端だけというような座り方とし、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を考慮していた。

 日本財団は12日、無人運航船の実証実験に関する記者会見を東京都内の事務所で開いた。同実証実験は海運、造船、舶用機器メーカー、商社など計40以上の企業・団体が参画する技術開発共同プログラムで、船種・テーマごとに5つのコンソーシアムがそれぞれのプロジェクトを進める。

 具体的なプロジェクトは「スマートフェリーの開発」「無人運航船@横須賀市猿島」「無人運航船の未来創造―多様な専門家で描くグランド・デザイン」「内航コンテナ船とカーフェリーに拠(よ)る無人化技術実証実験」「水陸両用無人運転技術の開発」の5つ。

 フェリーなど大型船を使った輻輳(ふくそう)海域での長距離航行による実証は世界初となる。全て内航航路で、2021年度末までに実証実験を行い、25年までに実用化を目指すほか、外航船への応用も視野に入れる。

 自律(自動、無人)運航に関する取り組みは、日本では歴史が長いが、近年は欧州のプロジェクトが注目を集める。

 日本は、運航の安全性向上や船員の労働削減など従来の延長線上で長期的な視点から地道に検討をしているが、欧州勢は一気に船の無人化をアピールするなど、「ぶち上げる」のがうまかった。その中身をよく見ると、無人運航するのが小型船で、沿岸からそう遠くない海域での短距離運航など肩透かしを食らった感じを受けるが、それでも欧州は目立っていた。

 今回の日本財団による実証実験は、大型船での長距離運航など世界初の事例となるほか、参画企業・団体が40以上の大規模プロジェクト。会見にはテレビ、一般紙なども来ておりPR効果があるなど、これまでの取り組みと異なる点が多いと感じた。技術開発内容と共に、世界に「アピール」する面で意味があると個人的には思っている。

 無人運航は、子どもの頃にわくわくしたSF小説やアニメなどに出てきた「未来」が現実化している側面がある。実際には、船員の減少なども踏まえた労務負担軽減など実利的な面もあるのだが、海事産業に就職を希望する若年層を増やす観点でもこのプロジェクトに注目したい。